中規模や大規模のオフィスの電話はIPフォンが主流で、各島に設置するL2スイッチもPoEに対応した製品を使用した方が、レイアウト変更や人事異動の対応も楽になります。
将来的なことを考えると今買うべきL2スイッチは10GbEに対応した製品なのかもしれませんが、値段が高価な上にPoEに対応した製品は今のところありません。
今回はIPフォンを使用する映像部門の業務効率を上げるために、PoEに対応したヤマハのギガビット対応L2スイッチを購入しましたので、使い勝手や購入前に注意したい点を紹介します。
YAMAHAがネットワークスイッチ市場へ本格参入
企業のネットワークをインターネットに接続するルーターの世界では、昔からYAMAHAの製品は定評があり多くの企業やPOSレジを導入している店舗で愛用されています。
ヤマハと言えばオートバイやピアノというイメージがありますが、システム系の仕事をしている人であれば誰もがYAMAHAのルーターを思い出すのではないでしょうか。
ヤマハは長年、高機能・高性能・安定感抜群のルーターを低価格で提供してきたのですが、社内ネットワークで使用するスイッチの市場へ参入したのは数年前で意外と歴史はありません。
ただ、昔からYAMAHAのルーターを使用してきたユーザーとしては、同社が発売するネットワークスイッチを試さない訳にはいかないので、WEB GUIに対応したSWX2310P-18Gを購入してみました。
Web GUIに対応
ヤマハが発売するギガビット対応L2スイッチにはSWX2310P以外にも、2013年に発売されたSWX2200-8PoEがあり、発売と同時に数台購入したことがあります。
SWX2200-8PoEは、基本的にYamahaのルーターと連携させて使用するという何とも使い勝手の悪い製品でしたが、今回発売されたSWX2310Pはこれ単独で使うことができます。
SWX2200-8PoEもSWX設定ツールを使えばYAMAHAのルータと連携させなくても設定の変更ができますが、使い勝手の良い物ではありませんでした。
今回発売されましたSWX2310Pシリーズは、コンソール接続はもちろん、TelnetやSSH接続、Web GUIにも対応しているので、YAMAHAのルータと連携させることなく使用することができます。
ただし、Web GUIで設定変更できない重要な機能もあるので、コンソール接続やSSH接続による設定変更に抵抗を感じる人は、他社の製品をおすすめします。
Web GUIは中途半端
こちらは今回購入したSWX2310P-18Gの管理画面ですが、他社の製品よりも画面構成がシンプルなので、ネットワーク初心者の方も安心して操作することができます。
ただ、安心して操作できる反面、アライドテレシスやパナソニックのインテリジェントスイッチとは違い、スパニングツリーやQoSの設定はコマンドを実行する必要があります。
スパニングツリーの設定やQoSのコマンド設定はマニュアルをみれば簡単にできますが、アライドテレシスのインテリジェントスイッチと比べると、ややハードルが高く感じるかもしれません。
おまけにデフォルトで全てのポートでスパニングツリーの設定が有効になっているので、マニュアルを確認せずにフロアスイッチに接続するとポートがダウンすることがあります。
こちらはVLAN作成の画面ですが、デフォルトのVLANに設定されているIPを変更することで、既存のネットワークからアクセス可能となります。
こちらはタグVLANの設定画面で、接続する機器はIPフォンとPCがメインなのでアクセスからトランクへ変更し、ネイティブVLANとトランクVLANを設定しました。
因みに、YAMAHAの無線アクセスポイントや他のスイッチを連携させるLANマップ機能を利用すれば、GUIでポートを指定してVLANの設定を変更することもできます。
同じネットワーク内にYAMAHAの製品が多数存在するのであればLANマップは有効ですが、このスイッチ単体で使うのであればオフにしても問題ありません。
こちらはSWX2310P-18GのQoSを設定する画面で、今回はCoSを使用して通信キューを決定するを選択しましたが、この画面ではそれ以上の設定はできません。
送信キューのプライオリティを設定するにはコマンド入力が必要で、マニュアル片手にコンフィグの設定を変更しました。
メール通知機能はおまけ程度の物で、Gmailなどのアカウント設定を必要とするメールサービスを利用することはできません。
端末監視画面では、スイッチに接続した機器のIPアドレスやポートを設定して、機器の監視をすることができます。
ウェブカメラやIPフォンなど、PoE給電で稼働するネットワーク機器にトラブルが発生した場合、電源を自動的に遮断して再起動させることができます。
SWX2310P-18Gのパフォーマンス
こちらは、SWX2310P-18Gにギガビットイーサに対応した2台のPCを接続し、CrystalDiskMarkを実行してみました。
使用したPCはCPUがCore i7でメモリを8Gバイト、ディスクは512GバイトのSSDを搭載したデルのノートパソコンです。
ポート数の違いで通信速度に差が出るので比較にならないかもしれませんが、SWX2200-8PoEと比べると2倍~3倍程度の読み込み速度が向上しています。
ただ、同じクラスの他社製品も全く同じスコアだということを考えると、ベンチマークの結果はスイッチの限界値ではなくPC性能の限界を表しているようです。
18ポートある製品ということを考えると、2台のPCを使用したデータの書き込みや読み込み速度の計測は、検証データとしては不十分の様です。
設置場所に注意
100Mbpsに対応しているIPフォンを経由するとPCの通信速度も100Mまでしか出せないので、今回はIPフォンとPC各1本ずつLANケーブルを使用します。
今まで使用していたのが8ポートの製品なので単純に倍の16ポート以上使えるSWX2310P-18Gを選びましたが、残念ながらオプションのマグネットがありません。
付属しているラックマウントキットではスチールデスクに固定できませんし、専用のマグネットプレートもありませんので、設置方法を考えると島スイッチとして使用するのは難しいかもしれません。
今回はSWX2310P-18GにアライドのマグネットシートLを貼り付けてデスク下に固定させる作戦ですが、動作保証外の使い方は故障の原因になります。
ヤマハがどの様な位置づけでこの製品を販売しているのかわかりませんが、デスクの上に置いて使用するかラックマウントさせて使用するのが良さそうです。
SWX2310P-18Gは全てのポートが1GbpsやPoEに対応していますし、ネットワークのループから守るスパニングツリーに対応しています。
他社のスイッチと比べると静音性も抜群でるので、IPフォンを使うオフィスの島スイッチに最も適している製品ですが、やはりマグネットで固定できないのが残念なポイントです。