バックアップはデータ消失のリスクから守るという意味ではとても有効な手段ですが、新しいNASの設定を復元したり共有フォルダなどのデータをリストアするのはかなり時間がかかります。
QNAPのNASは一般的なサーバとは違いハードウェア障害が発生した場合でも、ディスクを新しいNASへ移設するだけで簡単に短時間でシステムを復旧させることができます。
ただ、今までQNAPのNASを10台以上導入してきましたが、1台も壊れたことがなく移行作業をしたことがないので、新しい機種から古い機種へディスクを丸ごと移してみることにしました。
NASの復旧方法まで考える
スモールオフィスや家庭用のサーバとして、安価にシステムを構築できるNASを導入する方が増えていますが、本体が壊れた時の対処法まで考えながら導入する方はあまりいません。
予算に余裕のある企業なら、データ消失のリスクを考えてディスクを冗長化するRAIDやバックアップだけでなく、障害発生時のことを考えて別サーバへデータをレプリケーションして切り替える仕組みを取り入れています。
ただ、予算の限られるスタートアップ企業やホームサーバにレプリケーション設定をするのは非現実的なので、最低限RAID構成にしたりデータのバックアップで済ませている方がほとんどではないでしょうか。
何事も実践することが大切
仕事ができる人は、物事を机上の空論だけで決めたり片付けてしまう政治家とは違い、自分の肌感覚で物事を決められるくらい実践を繰り返してきた経験があります。
システムやデータの復元が上手く行かないのは、データをバックアップだけで満足して、重大な障害が発生した時にシステムやデータを戻せるかテストをしないからです。
とは言え、予算の限られるスモールオフィスや家庭で予備のNASを用意するのは無理があるので、環境を整えられる人が試して情報や経験を共有できれば良いのではないでしょうか。
古いNASへディスクを移設
古い機種から新しいNASへシステムを移行するのが王道的なやり方ですが、今回はその逆で2014年に発売されたTS-453 Proのディスクを2012年に発売されたTS-869 Proに移設しました。
本来なら、新旧システムに搭載するメモリの容量やファームウェアのバージョンなどを揃えるべきですが、今回はあえて何もせずディスクを移設することにしました。
ただ、何年もの古い機種では提供されている機能の制限により、一部の新機能やアプリが使えない場合があり、完全に同じ状態でシステムを復元することはできません。
そのことを理解した上であれば、新しい機種から古い製品への移行をしても構いませんが、トラブルなくシステムの移行をするなら極力同じ機種にするか新製品にしてください。
検証結果
今回の検証では、RAID-6構成のハードディスクを移行元のNASから抜いて、移行先のNASへ順番通りに移設し電源を入れたところ、特に大きな不具合もなく無事起動させることができました。
移行元のNASで設定したTCP/IPの静的アドレスが消し飛びましたが、RAID構成などのストレージの設定や共有フォルダへのアクセス権も無事で、とても順調に動作しています。
機種の違いから一部の機能は動作しませんでしたが、ファイルサーバとして使用するNASなら、データコピーやバックアップからデータをリストアする必要がないので、楽にシステムの移行をすることができます。
設定や操作が簡単なNASと言えども、共有フォルダのアクセス権を再設定するのは手間がかかりますので、ハードウェア障害だけでなく新しい製品へ移行する時にも使えて便利そうです。
ただ、どんなシステムにも言えることですが、大きな変更を加えるとトラブルが発生する恐れがあるので、ディスクの移行をする前に必ずバックアップしてから試してください。