フリーマガジンや基本無料のオンラインゲームなど、今の世の中には無料で楽しめるサービスが沢山ありますが、タダだからと何にでも飛びつくと結果的に損してしまうことがあります。
パソコンの世界には何十年も前から無料で使えるOSやソフトがあり、一時的なブームで利用者が増えましたが使い勝手や信頼性の問題で、一般的な利用者にまで広く普及することはありませんでした。
コスト削減目的のために無料で使えるOSやOffice系ソフトを導入したものの、操作性や信頼性の問題で効率が落ちたり大切なデータが消滅したりと、結果的に高いコストを支払わなければならなくなります。
フリーのNASを使う意味
QNAPやSynologyなどの高機能で安定性が高いメーカーの製品を普段から使用しているので、無料で利用できるNASのOSを利用する必要はありませんが、商用NASの有効性を再確認するために評価してみることにしました。
今回紹介するのはNAS OSは比較的評判が良いと思われるFreeNASで、ダウンロードしたイメージをDVDにコピーしPCで起動させるだけで、簡単にセットアップすることができました。
当然ながらFreeNASをインストールするハードウェアは無料ではないので、今回は古いワークステーションを用意しましたが、フリーのNASのために新しいハードウェアを購入していては無料の意味がありません。
日本のことわざにタダより高い物はないという言葉がありますが、フリーのNASを使うことが本当に損することになるのか、実際に構築したFreeNASを仕事で利用してみた感想を紹介します。
ハードウェアが必要
何度も言いますが、無料でダウンロードして使えるFreeNASは、OSをインストールするハードウェアは含まれていないので、当然ながらPCなどを用意する必要があります。
今回は、廃棄処分寸前のワークステーションにFreeNASをインストールしたのですが、メモリが最低でも8GB必要なのでデスクトップやノートPCにインストールする時は、要件を満たしているか確認してください。
FreeNASに必要なメモリは最低8GBで、32GBあれば十分とのことですが、他の商用NASが1GBでも動作することを考えると、ネットワークストレージ用に最適化されていないのではないかと思います。
ただ、ファストフード店に高級レストラン並みのサービスを求めるのはナンセンスなのと同じで、無料で使えるNAS OSに多くを求めるのは筋違いということを理解した上で利用しなければなりません。
置き場所に困るNAS
NASを利用するメリットのひとつに、ネットワークストレージの省スペース化がありますが、大きなデスクトップPCにFreeNASをインストールすると設置場所に困ることになります。
QNAPやSynologyなどのNASなら、ルーターと一緒に廊下の収納に入れて動かすこともできますが、デスクトップPCは大きさだけでなく廃熱も心配になるので、通気性の良い場所に設置しなければなりません。
小型PCやノートPCにFreeNASをインストールしたとしても、複数のディスクを搭載可能なストレージと外部接続しなければRAID構成にできないので、広い設置スペースが必要になります。
外部ストレージ用の電源を用意したり、セットアップのために外部モニターが必要になるなど、ネットワークストレージとして最適化されている商用NASと違い手軽さはありません。
課題が多いデータ保護の仕組み
ハードウェアとの相性なのかわかりませんが、FreeNASの運用を開始してから3か月で2度もシステムが起動しなくなるなど、商用NASと比べて不安定な印象があります。
保存していたデータが消失した訳ではありませんし、サーバのバックアップデータを保存しているだけなので深刻な事態にはなりませんでしたが、自宅や職場のファイル共有で使うのはかなり心配です。
格安スーパーでも代金を支払う以上は生鮮食品が腐敗していたら文句を言えますが、無料のシステムを利用していてデータが消失した場合の責任は、利用者にあることを理解した上で使用しなければなりません。
一応スナップショットやRsyncにも対応していますが、Windowsシャドウコピーが使えるQNAPのNASと比べるとかなり不便で、業務はもちろん家庭内での利用も困る時がありそうです。
NASやファイルサーバで最も重要なのは、強力にデータを保護する仕組があるのと簡単にファイルを復元できる機能なので、無料とは言えリスクが高いストレージに大切なデータを保存するのは心配です。
FreeNASはRAID-6の設定ができませんが、RAID-6に近いより安全な冗長化技術を利用できるので安全と言われていますが、特殊な仕組みはデータ復旧作業が難しくなる諸刃の剣でしかありません。
どんなに優れたファイルシステムでも、データ復旧の難易度が高いのはリスクなので、NASストレージでRAIDは基本的にRAID-1やRAID-6を選び、必ずバックアップするようにしなければなりません。
発展途上の操作画面
FreeNASの新しい管理画面は日本語のローカライズが進んでいないため、仕方なくレガシータイプの管理画面を使用していますが、Linux初期の頃のデザインと操作性という印象です。
レガシーな管理画面もローカライズや機能の作り込みも中途半端なので、無理してFreeNASを使うくらいなら実績のあるCent OSやUbuntuをサーバとして利用した方が断然使いやすくおすすめです。
FreeNASは、モニター接続できるPCにインストールするので、トラブルが発生した時は対応しやすいのですが、ネットワークや共有フォルダのパーミッション設定が、今まで使用してきたどのNASやLinuxよりもわかりにくいという印象です。
FreeNASはBSDベースなので、GUIに頼らずコマンドベースで運用すれば良いのかもしれませんが、誰でも簡単に操作できる管理画面でなければネットワークストレージだと言えません。
ITスキルが高く難しいことに挑戦するのが好きな方がFreeNASに挑戦するのは構いませんが、設定を間違えると起動しなくなることもありますので、大切なデータを保存にはリスクが高いと思います。
今後に期待
FreeNASは古い世代のCPUなら比較的安定動作するものの、最新のハードウェアでは問題があるという情報もあるので、よほど好きな人でなければ利用する必要は正直ありません。
初期設定のトラブル対応などのメンテナンスを考えると、一度しかない人生の貴重な時間を無駄するよりも、誰でも簡単に操作できて信頼性が高いSynologyやQNAPのNASをおすすめします。
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