突発的に訪れた緊急事態に備えてコンサルタントに依頼して急遽テレワーク環境の構築をしたものの、社内リソースへ満足にアクセスできない事態が頻発しています。
企業内の業務全体の把握や実務経験を持たないコンサルタントが、机上の論理だけで提案した仕組みが不測の事態に耐えられるはずもなく、悲鳴を上げている企業が増えています。
リモートワークは企業の規模が大きくなる程、ファイアウォールセッションや通信帯域の消耗が激しくなるので、アクセスが殺到してキャパシティーを越えないための工夫が必要になります。
一極集中アクセスのリスク
社員全員が一斉に在宅勤務を開始すると、オフィスのインターネット回線を圧迫したりファイアウォールセッションが枯渇してしまい、社内システムへアクセスできなくなることがあります。
特に気を付けなければならないのが、VPN接続による企業内ファイルサーバへのダイレクトなアクセスで、頻繁に画像や動画ファイルをコピーしていると、ネットワーク帯域を激しく消耗します。
仮に一人が1Mbpsの低速回線でファイルのコピーをしたとしても、100人が同時にアクセスすると簡単に100Mbpsとなるので、回線のパンクを心配するなら必要以上にVPN接続させてはいけません。
中小企業などで導入が進むビジネスタイプのインターネット回線は、帯域保証がないベストエフォート方式なので、1Gbpsだからと同時アクセスを大量に許可するとパンクしてしまいます。
その次に気を付けたいのがファイアウォールのセッション数で、日頃から様々なアプリケーションを利用しているからと油断していると、会社のVPN接続が不能となる場合があります。
大規模なリモートワークを実施するなら、通信機器のリソース消費状況を日々チェックし、ピーク時に耐えられる性能のハードウェアに交換するか、手段の分散化を検討してください。
クラウドサービスの利用
オンプレの基幹系システムを利用しているのであれば、企業内ネットワークへのVPN接続は避けられませんが、メールは軽いドキュメントの共有ならクラウドサービスを利用するのがおすすめです。
自宅のインターネット回線からOffice365やG Suiteなどのクラウドサービスを利用すれば、会社の通信機器やネットワークに負荷を与えることなく、リモートワークが可能となるので便利です。
ただし、クラウトサービスを利用する場合に、オフィスのネットワークへVPN接続しなければならないセキュリティ対策をしている場合は、通信インフラの負荷を解消することができません。
規模が大きな企業になるとコストをかけたセキュリティ対策ができますが、想定を遥かに超えた事態が発生すると堅牢な仕組みが足かせとなり、フットワークが鈍くなることがあります。
そんな時こそ常識に囚われず、一時的な例外の許可や複数の手段を採用して、特定リソースへの一極集中を回避するべきですが、大きな組織になるほど責任逃れや政治的な力が働いて情報システム部門を混乱させる場合があります。
想定外のトラブル
日頃から社内で働く時間を制限している企業であれば、非常時の一斉リモートワークも可能かもしれませんが、オフィスビルで働くのが当たり前の企業が非常時だからと、一斉にリモートワークを開始すると思わぬトラブルに遭遇します。
リモートワークで起こりえるトラブルと言えば、VPN接続に必要なライセンスの不足やDHCPのスコープ範囲の割り当てミス、リモート接続PCのスリープなど、大小様々な問題を想定して対処しなければなりません。
スマートフォンが普及したことにより、自宅にパソコンやインターネット回線がない人が増えていたり、ルーターのファイアウォール設定が原因で、VPN接続できない人も出てきます。
他にも、自宅にインターネット回線が開通するまで数ヶ月かかるので、急いでモバイルWiFiルーターを契約したものの、利用可能なパケットの上限に達してしまい通信制限されることもあります。
更に、会社のパソコンにリモートアクセスソフトをインストールしたものの、キーボードとマウスを外したのが原因でリモート操作ができない、モニターを接続しないと画面解像度が低くなる場合もあるなど、経験しなければ分からないことが沢山出てきます。
リモートワーク環境の早期構築のために、コンサルタントのアドバイスを求めるのは悪いことではありませんが、机上の空論や一般論で展開すると必ず失敗するので、企業内の実情を把握できている方に相談してください。
子育て世代の難しさ
緊急事態に備えて一斉に自宅勤務を開始したものの、小さな子供を預けられる施設を利用できず仕事に専念できない問題が、リモートワーク最大の課題とも言えます。
仕事の時間を確保するために美味しくて便利な冷凍惣菜をネット通販で購入するのはもちろん、買い物に行く手間と時間を少しでもなくすために、オイシックスやコープなどの契約も必要になります。
未就学児がいるご家庭の場合は仕事にならないので近場にいる両親に子供を預けるか、有給を取得して働かない日を設けたり夫婦同時に在宅ワークして交互に面倒をみて乗り切るしか方法がないのが現状です。
小学校低学年にもなると仕事の邪魔をしないように気を遣うことができるようになりますが、子供がストレスを感じて気分が落ち込んだりするので、欲しい玩具を購入したり頻繁に声をかけるなどのケアが必要になります。
時には、映画やテレビを視聴させたりゲームをやらせたりすることも必要になりますが、極力自宅にいる時間を無駄にしないためにも、質の良いゲームや映画を選んぶことも大切だと思います。
我が家では、英語でディズニー映画を好きなだけ視聴できるディズニーデラックスを契約したり、オンラインのリトミック音楽教室や英会話に参加している時間を利用して仕事をするなどの工夫をしています。
優先順位の決定
スタッフ全員のリモートワークが難しい場合、妊娠している方や持病がある方はもちろん、単身で子育てをされている方や公共交通機関を利用されている方など、対象を決めて優先順位を決める必要があります。
もちろん、老若男女誰もが平等にリモートワークの恩恵を受けられるのが一番ですが、どんな大企業でも実現できることとできないことがあるので、まずは大きなリスクを抱える人から優先的に在宅勤務させるべきだと思います。
企業からすると業績に大きく貢献する人から優先的にリモートワークさせたいと思うかまもしれませんが、個人の能力や人格をみて線引きをすると大きな問題に発展する可能性があるので、不公平でありながら公平な優先順位を決める必要があります。
リモートワークを実施するにあたり、勤怠管理や電話対応など様々な課題をクリアしなければなりませんが、業務内容で優先順位が高くないことは極力後回しにしたり損切するなど、常識に囚われない柔軟な思考と発想力が求められます。
問題を早期解決するには、時間的余裕がある時から現場スタッフにできることがないか考えさせシミュレーションさせることが大事で、リモートワークを一斉に開始する直前のタイミングで対処させると混乱します。
リモートワークに必要な物
日頃からリモートワークを推奨している企業であれば、会社からパソコンを支給したり、クラウドサービスの契約や通信環境を整えることもできますが、非常時に全ての企業が同じレベルの対応ができる訳ではなりません。
時にはリモートワーク用にパソコンの購入や自宅のインターネット回線整備を要請されることがあるかもしれませんが、非常時にはスタッフ全員ができるだけ協力する姿勢がないと、事業を継続することが不可能となる可能性があります。
個人の資産を活用して仕事をするBYODは、セキュリティやモラル的な問題があるので通常時に採用すべきではないと思いますが、金融やインフラなどの社会の基盤を支える企業でなければ、時には常識から外れた対応が企業だけでなく個人にも求められます。
ただ、子育て世帯や若い世代の人は、気軽にパソコンを購入したりインターネット回線を契約できる訳ではないので、給与所得次第で必要な設備を貸し出したり手当てを支給するなど、例外的な措置などを検討する必要があります。
近年、地震や台風などの大規模な災害の発生率が高くなり、働き改革の一環として在宅ワークの導入を検討する企業が増えていますが、導入設備費用の問題や使いやすさなどクリアしなければならない課題が沢山あります。最近はクリエイティブだからとMa[…]