今回は、ホームサーバーのなかでもエントリークラスに位置するDS220jのセットアップ手順について紹介しますが、ディスクを装着する時やセットアップする時に失敗しそうなポイントがいくつかありましたので簡単にまとめてみました。
Synologyの製品は高機能なNASのなかでは比較的操作や設定が簡単なシステムですが、搭載可能なディスクの種類やRAIDタイプを正しく理解しないと、ディスクの拡張性が損なわれたり障害発生時に復元の難易度が高くなる可能性があります。
大切な写真や動画を保存した後にファイルシステムの構成を変更するのは、手間がかかるだけでなくデータ消失のリスクが伴うので、セットアップウィザードで自動的に設定された構成のまま使い続けて良いのか、よく考えてから運用を開始する必要があります。
ディスクの装着
まずはNAS本体に搭載するHDDの搭載方法について紹介しますが、このDS220jはエントリークラスのモデルということもあり、SSD Trimをサポートしていませんし2.5インチディスクのマウンターもオプションなので、通常なら3.5インチHDDを搭載することになります。
DS220jはシステムの起動中にディスクの交換が可能なホットスワップに対応していないため、電源を落としてコンセントを抜いた状態でディスクを装着する必要がありますが、2ドライブベイのNASならHDDの交換は滅多にしないので不便ではありません。
ディスクの取り付け方法はとても簡単でプラスドライバーがあれば誰でもできますが、ファンを抑えながらHDDをSATAコネクタに接続すると金属プレートが歪む恐れがあるので、ディスクを取り付けする際には十分注意してください。
サーバと言えば電源の二重化やSASディスクを使用するので、一般的なパソコンよりも丈夫なハードウェアで構成されていますが、NASは価格を抑えるために作られていることもあり、企業で使用する8ドライブ以上の製品でも非常にシンプルな構成で作られています。
そのシンプルなハードウェア構成が安定動作する秘訣なのか、今まで家庭向けや企業向けのNASを何十台も導入してきましたが、5年以上経過した製品でもディスクやファン以外の部品が壊れたことがなく、故障のための買い替えをしたことがありません。
話が本題から大分それてしまいまいたが、本体カバーをスライドして開けた後はディスクを1本ずつSATAコネクタに接続し、付属のビスで固定してから本体カバーを被せてスライドし、付属のビスでカバーが開かないようにロックしてください。
NASをセットアップする前の準備
SynologyのNASにはセットアップに必要なマニュアル、システムイメージ、アシスタントツールが付属しておらず、メーカーサイトからダウンロードしたアプリケーションを事前にインストールする必要があります。
その様な意味でSynologyのNASは初心者向けではないという人もいますが、最新バージョンのファームウェアをインストールしてから初期設定をすることができるので、他社製品と違いセットアップ後の再起動を何度もする必要がありません。
因みに、同一セグメント内にあるNASをセットアップするのに使用するSynology Assistantですが、ESETなどのパソコンにインストールしたファイアウォールが原因で、システムを検知することができないので無効にする必要があります。
設定は基本スキップ
セットアップウィザードを実行すると、外出先からNASにアクセスできるQuickConnectを有効にしたり、アプリケーションをインストールしたりできますが、必要な時に必要な物だけを有効にした方が良いので、基本はスキップをおすすめします。
セットアップ後にRAIDタイプを変更したり必要な機能だけをインストールするなら、セットアップウィザード中にインストールするアプリケーションの選択もスキップした方が、後で削除する手間がなく効率的に環境を構築することができます。
NASのセットアップウィザードが完了すると、NASの位置情報などの送信などの同意を求められる画面がいくつか表示されますが、特別な理由がなければ全てチェックを外したり拒否することをおすすめします。
今回紹介した方法でセットアップしなくても問題なくNASを使うことができますが、DS220jはメモリが少なくCPU性能も高くないので、少しでもリソースを有効に活用するためにも不要なアプリはインストールしない方がおすすめです。
RAIDタイプの変更
セットアップするNASを一覧から選ぶと初期設定を行うためのウィザードが始まりますが、自動で構成されるストレージプールタイプは単一ボリュームで、RAIDタイプはSynology Hybrid RAID(SHR)なので、必要に応じて削除してから再構成してください。
2ドライブベイのDS220jをベーシックディスクに構成することはないと思いますが、データ復旧会社で復元がしやすいRAID-1にした方がメリットがある場合もあるので、必要なら運用を開始する前にRAIDタイプを変更してください。
Synology Hybrid RAIDは異なる容量のディスクを無駄なく利用できる技術ですが、2台のディスクでは全く意味がありませんしストレージが故障した時の復元難易度が上がるので、個人的にはセットアップ後にRAID-1へ変更することをおすすめします。
ストレージを単一ボリュームから複数ボリュームの作成が可能なストレージプールに変更したり、RAIDレベルをSynology Hybrid RAID(SHR)からRAID-1に変更するには、ストレージマネージャーのストレージプールを削除してください。
新規にストレージプールを作成すると、ストレージプールタイプを選択することになりますが、複数のボリュームでストレージを構成するのであれば「より高い柔軟性」を選択し、パフォーマンス重視なら「より良いパフォーマンス」を選択してください。
ストレージプールを作成する時にドライブチェックを実行するのか確認を求められるのですが、中古ディスクはもちろん新品のディスクでもはじめてNASに搭載するなら「はい」を選択して、大切なデータを守るようにしてください。
ストレージプールを作成しただけでは写真や動画ファイルを保存したり、アプリケーションをインストールすることができないのでボリュームを作成する必要がありますが、ストレージタイプの「より良いパフォーマンス」を選ぶと単一ボリュームとなります。
因みに、より良いパフォーマンスタイプのストレージを1TBと2TBでRAID-1構成にした場合、ストレージプールとボリュームは1TBとなりますが、1TBの方を2TBに交換しストレージを再構成すれば2TBに拡張されるので、最初から大容量のディスクを搭載する必要はありません。
ただし、RAIDを再構成している最中に障害が起きるとデータが消失する可能性がありますので、必ずバックアップを取得したりデータ移行が終わるまで交換するディスクを消去せずに保管したり、ディスクを複製するなどの安全対策を必ずしてください。
ストレージのボリュームを作成した後はネットワーク設定を変更し、Video StationなどのアプリケーションをインストールするだけでNASを利用できるようになりますが、個人的に思う理想の展開方法がありますので別記事で詳しく紹介させていただきます。