入手困難な今の状況を考えると、NASに4Kネイティブ(以下4Kn)HDDを搭載するメリットについて紹介する意味はないのかもしれませんが、改めてパフォーマンスの測定やディスクコピーなどの使い勝手を再確認することにしました。
数年前から稼働させている4Kn HDD搭載サーバは、Active Directory認証サーバにしたり、数百人が同時にアクセスするファイルサーバにしても問題なく動作していますが、NASに搭載するのは初めてなので改めて検証しました。
NASが4Kn HDDを正しく認識し共有フォルダへのアクセスが正常に動作するのかはもちろん、512e HDDと比べたパフォーマンスの違いや、512eディスクのデータをセクター単位でコピーが可能なのかを確かめてみました。
4Knと512e HDDの速度差
パフォーマンスの比較に使用したのは、Seagateエンタープライズ向けHDD EXOS ST10000NM0146(4Kn)、Seagate IronWolf Pro ST8000NE001(512e)、Western Digital WD101EFAX(512e)で、いずれもNASに使用しているものです。
厳密に4Knと51eの性能差を比較するのであれば、同じクラスのディスクを使用するべきですが、高価なディスクを何個も買える程の財力がありませんので、格下クラスではありますが性能が近い物をピックアップして評価しています。
それぞれのディスクを同じパソコンのSATAドライブとして接続し、Crystal Disk Markを実行してみたところ、4Knはランダムアクセスのスコアが少し良いだけで、512eと比べて驚くほどの性能差はみられませんでした。
少量ではありますがファイルのコピー時間をストップウォッチで計測してみたところ、左のSeagate ST10000NM0146(4Kn)と右のWestern Digital WD101EFAX(512e)は共に7秒台で、体感的にもベンチマーク通りの結果となりました。
エンタープライズ向けとハイエンドなNAS向けのHDDに性能差がないことや、同時アクセスが多いシーンではパフォーマンスを発揮できないSATA接続のNASには、EXOSよりもIronWolf Proの方がおすすめです。
混ぜるな危険
10TBの4Kn HDDをこれdo台でQuick Eraseしてみたところ正常にジョブが完了しましたが、6TBの512eディスクのコピーを実行してみたところHDD to Smallと表示されたので、セクタ単位の複製はできそうにありません。
一応1TBのディスクはコピーできそうですし、HDD Too Smallの警告が表示されても続けることもできますが、ディスク複製速度が異常に遅く10倍以上かかるので、とても正常に動作しているとは思えません。
一応、4Knセクタと512eセクタのディスクを混在させてRAIDを構成することも可能ですが、パフォーマンスが低下することや安定動作を考えると、同一セクタのHDDをセットで搭載してストレージを構築した方が安全です。
因みに、Windowsパソコンでディスクが4Knに対応しているか否かを調べる方法は簡単で、管理者権限でコマンドプロンプトを起動し、「Fsutil fsinfo ntfsinfo ドライブ文字」を実行して表示されるセクターあたりのバイト数で分かります。
今売られているHDDは512eタイプが主流ですが、秋葉原のショップには4K対応NAS専用ディスクとして、嘘ではないが紛らわしい表記で売られている製品もあるので、本当にネイティブなのか品番を確認してからにしてください。
4Kn HDDをNASに搭載
エンタープライズ向けの製品には、512もしくは4Kセクタにモードを変更して使えるタイプもありますが、今回はNASで4Knディスクが使えるか確実な検証をするために、EXOS ST10000NM0146を利用することにしました。
動作検証には管理画面で4Knディスクの確認ができるSynologyのNASを利用しましたが、必ずしも認識したり正常に動作するとは限らないので、メーカーサイトの互換性リストを確認した上で購入することを強くおすすめします。
一応QNAPのNASもEXOSのディスクを正常認識し、共有フォルダを作成してファイルコピーしたりファイルを開くこともできましたが、メーカーが公表する互換性リストには4Kn HDDは含まれていないので自己責任となります。
4Knと512セクタのディスクを混在させてRAIDの構成が可能ですが、パフォーマンスに影響したりデータ消失時の復元が難しくなるなど、様々なデメリットを考えると、同一セクタに統一して搭載することを強くおすすめします。
4Kn HDDの今後
ここ数年で4Kn HDDを搭載したファイルサーバを何台か稼働させましたが、最新のオペレーティングシステムやアプリケーションを使えば特に問題なく動作するので、NASやサーバに搭載する前提があるなら神経質になる必要はありません。
オペレーティングシステムが4Knディスクをサポートしたことで移行が加速するかと思いきや、いつまでも古いパソコンを使い続けるユーザーが多くいたことや、512eディスクが登場したことでサーバ市場からも消えそうな勢いなのが残念です。
今はパソコンだけでなくNAS専用の4Kn HDDを入手するのが困難な状態ですし、無理してエンタープライズ向けのSATAディスクを購入するメリットもないので、しばらくは512eが主流になるのではないかと思います。
最後に、エンタープライズから家庭向けのサーバ用HDDを100本以上利用してきた経験で言うならば、価格が高く入手困難な4Kn HDDを利用するメリットはあまり高くないので、NASに搭載するならコスパが優れた512eのIronwolf Proで十分です。
NAS専用HDDで重要なのは4Knと512eよりも、RAIDに不向きなSMRタイプのディスクではなくCMRタイプを選ぶことで、人気が高いWestern Digital Redに採用されたことがあるので、比較的容量が少ない製品を選ぶ時には注意してください。