論理値9.6GbpsのIEEE 802.11axと比べると速度や接続性に劣る802.11ac規格ですが、最新規格の無線LANと比べると低価格で導入できるので、家庭向けとして使う分には狙い目だと思います。
802.11axの無線LANは、単純に速度を高速化させただけではなく接続性が改善されるので、安定したネットワーク構築を第一に考えるのならおすすめですが、最新規格に対応したデバイスがなければ意味がありません。
まだまだ発展途上と言える11axに投資をするよりも、我が家のWi-FiLANルーターの性能をフルに発揮させるための環境を構築した方がメリットがあると思い、802.11acに対応したUSB無線LAN子機を購入しました。
カニチップが現れた
今回何気なく選んだ802.11ac対応USB無線LANアダプターは、家庭向けのパソコンに搭載されているカニマークのチップでお馴染みのRealtek製で、安定動作や相性が心配で警戒しましたが特に問題なく使えています。
Realtek製チップと言えば品質の悪さに定評があり、昔から自作ユーザーから敬遠されていましたが、最近は家庭向け製品で実績を上げたのかハイエンド向けの用途でない限り気にする必要はなさそうです。
ネットワークは安定接続が重要なので、本当ならインテル製チップを搭載した無線LAN子機の方が良いのですが、無い物ねだりをしても仕方がないのですがカニチップ製の物を使うことにしました。
Realtek 8812BU Wireless LAN 802.11ac USB NICを使用している他のユーザーレビューでは、不安定で常時接続には向かないとのことでしたが、我が家の環境では一日中YoutubeやDisny+を再生しても問題ありません。
デスクトップパソコンの正面パネルに接続したり、高い負荷をかけるとWi-Fi接続が切断されるという現象があるそうですが、ルーターとの相性が良いのか非常に安定しているので今の所は満足しています。
Win&Mac対応
Windows10ならネジ式の無線LAN子機本体とアンテナを接続し、パソコンのUSB3対応ポートに差し込むだけで、ドライバーをインストールせずに簡単に利用することができます。
Realtek 8812BU Wireless LAN 802.11ac USB NICには、ドライバー用のCDが付属していますが、プロファイルを作成したり中継器として使用する予定がなければ、プログラムをインストールせずに使用してください。
この無線LAN子機はWindowsとMac OSで利用することができますが、Windows Server 2016の場合はドライバーをインストールしても、正常に認識させることができず使うことができませんでした。
因みに、今時のパソコンはCD-ROMドライブが搭載されていないので、メーカーサイトからドライバーをダウンロードしてみましたが、存在しない過去のメールアドレスを入力しても大丈夫でした。
NASには使えない
最新の賃貸住宅やマンションには有線LANが使えない物件が多いので、ケーブル接続するしかないNASは玄関や廊下の収納に入れる必要があるのですが、夏場は温度が高くなるので良い環境とは言えません。
NASを他の部屋に移設しようにも有線LANケーブルが使えないので、SynologyやQNAPにRealtek 8812BU Wireless LAN 802.11ac USB NICを認識するか試してみましたが、残念ながら無線は使えませんでした。
これは無線LAN子機の問題ではなく、ハイエンドクラスのNASでもサポートしている無線LAN子機の種類が少ないので、ホームサーバの無線化を考えているのなら互換性リストに掲載されている製品を購入してください。
Wi-Fiアクセスポイントを中継器にすれば疑似的にNASの無線化が可能ですが、接続が安定するとは限りませんし速度も落ちるので、メーカーが公表する互換性リストの子機を購入して利用するのがベストな方法です。
リンクスピードとアクセス速度は違う
論理値で最大6.9Gbpsを誇る802.11acですが、ストリーム数、距離、障害物、電波干渉などが原因でスピードが落ちることがあるので、最新の規格に対応しているからと常に高速な通信が可能とは限りません。
今回購入したRealtek 8812BU Wireless LAN 802.11ac USB NICは1,200Mbps対応しているはずですが、我が家で使用しているアクセスポイントに近づけても886Mbpsまでしか上がりません。
Wi-Fiルーターを廊下収納に格納し、扉などの障害物があるためにリビングや仕事部屋まで離れても500Mbpsで接続しますが、実際に小さいファイルをNASにコピーすると10Mbpsを下回ることがあります。
時速100kmで走行できる高速道路でも走行するのが原付スクーターでは速度がでないのと同じで、データアクセス先のNASやサービスのパフォーマンスが悪いと意味がないので、リンク速度とデータアクセスがイコールだと考えてはいけません。
最近は、好成績のスループットを叩きだす10Gbps対応インターネット回線が話題ですが、所詮はベストエフォートで自社回線内での速度でしかないので、それに合わせて自宅のWi-Fiルーターを最新規格にする必要はありません。
自宅にあるパソコンからNASに大量のデータをコピーするとわかりますが、同じネットワーク内でも条件次第では1Gbpsもでないので、高価な802.11axを今買うくらいなら802.11acでも不自由しません。
過去に10Gbpsの限界に到達する通信環境を構築したことがありますが、M.2 NVMe SSDを搭載したサーバとパソコンを直接有線LANケーブルで接続し、大容量の動画ファイルをコピーした時だけでした。
それでも、802.11ax対応のルーターに10GbpsLANポートを搭載している製品があれば意味がありますが、ローカル側が1Gbpsにしか対応していない製品もあるので、急いで最新規格にする必要はありません。
本格的にデスクトップパソコンを802.11ac対応にさせるなら、PCI Expressに接続するタイプの方が安定するかもしれませんが、こちらもハズレが多いらしいので安価で接続が楽なUSBタイプがおすすめです。
無料Wi-Fiが使えない!?
ここからは番外ですが、無料で無線が使えるカフェやセキュリティ対策している企業のWi-Fiは、SSIDとパスワードを正しく入力したとしても承認されなければネットワークへ接続をすることができない場合があります。
例えば、スターバックスコーヒーには無料で利用できるWi-Fiがありますが、登録した端末の接続時間が上限に到達するとブロックする仕組みを取り入れているので、無線LAN子機の問題と勘違いしてはいけません。
これは企業でも同じで、L2Blockerなどのセキュリティ装置を導入しているネットワークでは、正規のSSIDとパスワードを設定しても無線LAN接続はできないので、システム管理者に端末を承認してもらう必要があります。