小規模オフィスならともかく、ストレージ容量が大きなファイルサーバのクラウド化は価格メリットがないので、オンプレで構築し運用している企業も多いのではないでしょうか。
ただ、10TBを越えるファイルサーバのフルバックアップとなると3日以上かかることもあるので、ディスク障害によるファイルの消失に対応できないのではないかと不安を感じている人もいるはずです。
大切なデータを保護するために、ファイルサーバのレプリケーションやスナップショットを組み合わせれば大惨事になる可能性は高くありませんが、だからとバックアップなしでは枕を高くして眠ることはできません。
終わらないフルバックアップ
過去にフルバックアップを週一度のペースで実行していましたが、データ容量が20TBもあるファイルサーバだと検証なしでも5日かかるので、そのジョブが終わるまで差分データが取得できない問題に悩まされていました。
丸一週間近くかけて取得したデータも検証なしでは正しくバックアップできているかもわかりませんし、稀に途中でジョブ止まることもあるので、保険として意味があるのかと考えることもありました。
少しでもフルバックアップ時間を短縮しようと、バックアップ対象のサーバにハイスペックのディスクを搭載したり、ストレージとのネットワーク接続を10Gbpsにしてみるなど、ハードウェア性能を上げたこともあります。
そこで長年使用していたバックアップソフトの見直しをするために、BackupExecやArcserveなどの有名なパッケージ製品だけでなく、SynologyのNASなら無料でインストールできるパッケージの評価を行いました。
バックアップのスピード革命
今回はバックアップ速度の改善するために、二大バックアップソフトのBackupExecとArchserveの他に、SnynologyのNASなら無料で使えるActive Backup for Businessの検証を行うことにしました。
テスト環境では信憑性が低いので、本番ファイルサーバにソフトウェアをインストールしフルバックアップを実行しましたが、Archserve Backupは普段使用していないのでテストサーバだけの検証となります。
20TBのファイルサーバをBackup Execでフルバックアップすると4日もかかるのですが、ジョブが完了するまで差分データが取得できませんし、失敗すると丸一週間分のデータを取得できないので大きなリスクになります。
試しにSynology Active Backup for Businessで10TBファイルサーバのバックアップを実行すると、Backup ExecやArchserveの約半分である24時間でジョブが終了したので、データを正常に復元できるのか心配になりました。
Synology Active Backup for Businessは、ファイルサーバだけでなくPCクライアントのバックアップを一元管理できるので何度かリストアしたことがありますが、問題なくシステムを元に戻すことができました。
因みに、ファイルサーバとNASは1Gbpsネットワークのトラフィックを限界まで消費している訳ではないので、10Gbpsに通信をアップグレードする必要があるかわかりませんが、更に高速なバックアップが可能になるかもしれません。
もちろん、トラフィックの大量発生で他のサービスに影響が起きる場合は、SynologyのNASは帯域制限を設定することができるので、単にフルバックアップが速いだけのNASではありません。
念のために本番ファイルサーバから1TBコピーし、テスト環境にバックアップソフトの代表とも言えるBackup Excecをインストールしジョブを実行したところ、スループット2,758MB/分の6時間22分でジョブが完了しました。
次は同じテストサーバにArchserve Backupをインストールし、フルバックアップジョブを実行してみたところ、約5時間40分でジョブが完了したのでBackup Execよりも40分程度時間短縮することができました。
そして同じテスト環境にActive Backup for Businessのエージェントをインストールし、フルバックアップを実行してみたところ、約2時間30分と半分以下の時間でジョブが完了するという圧倒的なスピードに驚きです。
10TBをフルバックアップした場合、単純計算で63時間もかかるので24時間でジョブが完了するので、Synology Active Backup for Businessがいかに高速バックアップ可能なソフトなのかが分かります。
ただ、Synology Active Backup for Businessには取得したデータの検証機能がないので、より確実なデータ保護を目的とするならBackup ExecかArchserve Backupの方がおすすめです。
これは個人的な印象ですが、専門的なシステム管理者がない現場には短いトレーニング時間でバックアップ設定ができるBackup Excec、難易度が高めでも安定動作を望むならArchserve Backupがおすすめです。
Active Backup for Businessは、クライアントのバックアップも集中管理できる大変おすすめな無料パッケージですが、無料に抵抗を感じる方には定番の製品を強くおすすめします。
ただ、ファイルサーバのバックアップ用ストレージを用意する必要があるなら、Active Backup for Businessが無料で利用できる、SynologyのNASを購入した方が選択肢が増えるので、興味がある方は是非お試しください。
Active Backup for Businessの特徴
Active Backup for Businessでのサーババックアップには、システム全体の復元が可能な物理的サーバと、共有フォルダだけを指定してバックアップするファイルサーバモードがあります。
同じハードウェアにデータを復元するのであれば物理的サーバのバックアップがおすすめですが、将来的なマイグレーションなど汎用性を持たせるのなら、ファイルサーバモードがおすすめです。
因みに、物理的サーバとして定期スケジュールを組んでバックアップを取得した場合、最新データはもちろん日時を指定してシステム全体の復元をしたり、必要なデータだけを選んでリストアすることもできます。
こちらは、Synology Active Backup for Businessを使用して1TBのファイルをバックアップする前とリストアした後のディス情報を比較したものですが、使用領域のバイト数が全く同じになりました。
Synology Active Backup for Businessを紹介しているサイトは他にも沢山ありますが、本番ファイルサーバでバックアップを実行したりリカバリーした結果の説明がない実践的な内容ではないのが残念です。
因みに、このバックアップソフトを4Knタイプのディスクで実行したところ、問題なくバックアップしたりリカバリーすることができましたが、公式マニュアルには対応していないと書かれているのでご注意ください。
Synology Active Backup for Businessは、サーバだけでなくWindowsクライアントのバックアップを無料で集中管理できるので、情報システム担当者の負担を大幅に削減することもできます。
Plus以上必須
無料で使える超高速なSynology Active Backup for Businessですが、エントリークラスやホームユーザ向けの製品クラスにはパッケージをインストールすることができないので、必ずプラス以上の製品をご用意ください。
ファイルサーバのバックアップ用ストレージとしておすすめなのが8ドライブベイ以上のNASですが、ValueシリーズのDS1817ではActive Backup for Businessのパッケージをインストールできないので、Plus以上のモデルをお求めください。
おすすめは比較的価格が安いデスクトップ据え置き型のDS1819+で、この機種はネットワーク接続が1Gbpsですが、PCI Express拡張スロットにボードを追加することで、通信を10Gbpsに対応させることができます。
ハードウェア性能でNASを選ぶならQNAPになりますが、Active Backup for Businessなどビジネスシーンで役立つアプリが充実していて品質が高いSynologyの方が、バックアップストレージとして断然おすすめです。
【NASキット】Synology DiskStation DS1819+ [8ベイ / クアッドコアCPU搭載 / 4GBメモリ搭載] 大容量8ベイ...