クラウド時代にオンプレでシステムを運用するのはナンセンスに思うかもしれませんが、スタッフ数を300人以上抱えていたり50TBを越えるストレージの取り扱いがあると、自前でサーバを運用した方がコストメリットがあります。
ただ、ファイルサーバのレプリケーションのためにハードウェアを新調するのもナンセンスなので、旧システムのディスクを全て交換し再利用することにしましたが、おかげで費用を1/5まで下げることができました。
もちろん、古いサーバはハードディスク以外の部品も壊れたりしますが、基本頑丈で寿命が長い上に簡単にパーツの交換が可能なので、バックアップストレージなどの保険的な使い方であれば10年闘うことができます。
ディスクとサーバの寿命は違う
サーバに搭載される全二重通信対応のSASディスクは、パソコン向けのSATA製品よりも高いパフォーマンスを発揮しますが、堅牢性はNAS専用HDDと大差ないので最大保証期間を越えての利用はとても危険です。
ストレージ導入費を節約のために、同じハードウェア構成のシステムからディスクを抜いて故障する度に入れ替えて使用しましたが、7年を越えた辺りから故障するようになり気が付いた時には12本のストックが全滅しました。
データ消失のリスクを考えるとサーバは製品保証が切れる前に交換するのがベストですが、ファイルサーバのレプリケーションにコストをかけるのも勿体ないので、ディスクを交換してリサイクルすることにしました。
故障しやすい部品
今までDellやHPのサーバを多数導入してきましたが、圧倒的に故障しやすいのはハードディスクで、その他は電源ユニットが稀に壊れたり、RAIDコントローラーのバッテリー交換サインが出る程度です。
サーバの電源をシングルにすると負荷が高くなり壊れやすくなりますが、過去の苦い経験から必ず冗長化することにしていますし、電源ユニットの中古は比較的手に入れやすいので心配していません。
相当長く使い続けるか運が悪くなければCPUやメインボードが故障することはありませんが、稀にiDRACなどのサーバをリモート操作するオプション装置が壊れることがあるので、交換用の部品を事前に調達するのがおすすめです。
iDRACが故障するとファンの制御が不能となり常時爆音を響かせますが、リモート制御を利用しないのであればメインボードから外してしまうことでシステムが正常に動作するようになります。
因みに、Dell純正品以外のSASディスクをシステムに搭載して起動すると、Server Administratorの管理画面に警告が表示されますが、Seagate EXOSでも問題なくストレージを構成して使用することができました。
旧マシンでも性能アップ
今回リサイクルするサーバは、PERC H700 RAIDコントローラーを搭載したDell Power Edge R510ラックマウントシステムで、購入してから8年目に突入した大ベテランです。
このシステムに搭載されているRAIDコントローラは6Gbps SASなので交換も検討しましたが、メインボードのPCI Expressの規格が古く12Gbpsに対応しないので、ディスクだけ全て交換することにしました。
Seagate EXOSのSASディスクが12Gbpsに対応していても、RAIDコントローラーの性能が6Gbpsなので当然ながら理論値の半分しかパフォーマンスを発揮しませんが、アクセス速度が改善しない訳ではありません。
12Gbps SAS対応のSeagate EXOSを6Gbps RAIDコントローラーに接続してベンチマークを実行してみたところ、8年前から稼働しているWestern DigitalのHDDよりも1.5倍性能が向上しました。
因みに、どちらのストレージもRAID-6で構成しているのですが、古いWestern DigitalのSASディスクは4TBを12本、新しいSeagate EXOSは10TBを6本搭載し、40テラバイトのボリュームで構成しています。
厳密にパフォーマンスの違いを測定をするなら、同じディスク容量とドライブ数でストレージを構成するべきですが、実践的ではないことにコストをかけても仕方がないので対等な条件にはしませんでした。
因みに、SAS規格の大容量HDDは価格が高く納期までに時間がかかる場合があるので、高速な双方向データアクセスを求めない用途であれば、低価格なSATA規格のNAS専用HDDを利用する方法もあります。
大容量ストレージがおすすめ
新しい50TBのファイルサーバを購入すると100万円を超えてしまいますが、10TBのSASディスクを7本購入したとしても35万円程度で済むので、かなりのコストを抑えることができます。
ただ、サーバのリサイクルはファイルサーバのレプリケーションなど、重要性が低い割には導入コストがかかる大容量ストレージに有効ですが、システムダウンが大きなリスクになりえるなら用途には向いていません。
その点、ファイルサーバのバックアップやレプリケーションなら一時的に停止しても問題ありませんし、仮に電源ユニットやCPUが壊れても交換の部品が手に入れば対処することができます。
もし、メインボードが故障したり交換部品が手に入らず本体を丸ごと交換する必要がでてきたとしても、新しく購入したディスクはそのまま使えますので、無駄な投資になることはありません。
当然、製品保証が切れたシステムはサポートが受けられないので、完全自己責任で部品交換を行う必要がありますが、自作パソコンの組み立てよりも簡単にメンテナンスすることができます。