最新ハードウェアのサーバやハイエンドクラスのNASは10Gbps通信を標準対応しつつありますが、L3スイッチやフロアスイッチが割と高価なままなので、企業でもなかなかネットワークの高速化が進まないのが状況が続いています。
企業規模が大きくなるにつれてコスト負担が大きくなるネットワークの10Gbps化ですが、ファイルサーバのレプリケーションやバックアップジョブの大幅短縮など、費用をかける価値が十分にある用途に限定して導入するケースが増えています。
また、日常的に動画編集を行うスモールオフィスや一部のハイエンドユーザーなど、1Gbpsの通信速度にストレスを感じている方が作業環境を改善し少しでも効率良く働くために、10Gbpsネットワークスイッチ化を進めています。
通信高速化の壁
今回はファイルサーバのレプリケーションやバックアップ時間短縮のためにQNAP QSW-M1208-8Cを購入したのですが、ネットワーク環境を高速化したとしても10Gbpsに迫る通信速度でアクセスするのは困難なことです。
10Gbpsは通信は、サーバやNASだけでなくクライアントとスイッチも対応させる必要がありますが、それだけでは不十分で双方ともSATA接続よりも高速なNVMe SSDを搭載する必要があります。
仮に双方のストレージをNVMe SSDにしたとしても、ノートパソコンで使える10Gbps対応ネットワークアダプタはかなり高価なので、PCIe拡張ボードを搭載可能なデスクトップパソコンを使う必要があります。
10Gbpsに迫る無線規格のIEEE 802.11axを使う手も考えましたが、アクセスポイントとクライアントのアンテナがフル規格に対応したとしても、距離や電波干渉で速度の低下が起きる論理値の話でしかありません。
時間と効率で考える
現時点では10Gbpsネットワークの能力を最大まで引き出す環境を整えるのは難しいことですが、1Gbpsが限界の通信を2Gbpsに高速化させるだけなら特に難しいことではありません。
例えば、今まで1Gbpsネットワークで1時間かけてコピーしていた動画ファイルが2Gbpsなら半分の30分になりますし、4Gbpsまで速度が出るなら15分で終わるので大幅な時間の短縮になります。
ランダムアクセスが多く発生するファイルコピーの場合、ネットワーク速度をいくら高速化しても効果はありませんが、動画やバックアップファイルなどのシーケンシャルアクセスが発生するデータなら4Gbps越えも決して夢ではありません。
データアクセスが集中するサーバやNASに、発熱が課題のNVMe SSDを搭載するケースは珍しいので、SATA規格を越える6Gbps以上のパフォーマンスを引き出すのは困難ですが、RAID構成次第では更なる高速アクセスも可能です。
もちろん、NASに搭載されているハードウェアの性能やファイルシステムの違いが影響することもあるので、10Gbpsネットワークの限界を追求するのではなく、作業効率をどれだけ短縮化することができるかを意識した方が健全です。
コンボポートが安くて便利
10Gbps対応ネットワークスイッチ選びを微妙に難しくしているのが、既存のLANケーブルが使えるRJ45と光ケーブルを使用するSFP+の選択で、製品選びを間違えると後悔してしまいます。
オフィスデスクで使用するエッジスイッチなら、頑丈で既存配線の使いまわしが可能なRJ45のLANケーブルで十分ですが、コアスイッチとフロアスイッチ間の距離次第では光ケーブルにする必要があります。
機器の通信干渉を抑えたり、RJ45や光などケーブルの種類が混在する状況ならSFP+ポートが便利ですが、モジュールが割と高価なので柔軟に対応できるコンボポートにした方がコストを抑えることができます。
予算に制限がなく今後接続する機器の通信ポートが不明ならオールSFP+でも構いませんが、30m以下の既存LAN配線を再利用する前提なら10GBase-T、小規模でケーブル規格が混在する環境ならコンボポートがおすすめです。
コンボポートの選び方
コンボポートスイッチの注意点ですが、ポート数が多いからと勘違いして購入される方がいますが、10Gbase-TとSFP+どちらか片方しか使うことができないので、同時接続が必要な数を間違えないようしてください。
例えば、QNAP QSW-M1208-8Cは20ポート利用可能に思えますが、5番から12番までは10GBase-TとSFP+どちらか片方しか使用できないので、最大12ポートの端末まで接続することができます。
QNAP QSW-M1208-8Cの10GBase-Tは、標準で8ポート利用可能でトランシーバーを使えば最大12ポートまで使うことができますが、SFP+だけならオプション不要で12ポート利用することができます。
トランシーバーや光ケーブルの価格を考えると、特殊な環境でなければ無理してコンボポートのネットワークスイッチを導入する必要はありませんが、10Gbpsネットワークの本格的な導入前の検証などに役立ちます。
機能の確認も忘れずに
10GbpsネットワークスイッチにネットワークカメラやIPフォンなど、PoE給電を必要とする機器を接続するとは思えませんが、利用する機器のタイプを事前に確認することが何よりも大切です。
今回はVLANやスパニングツリーの検証をするためにQNAP QSW-M1208-8Cを購入しましたが、単一セグメントのシンプルなネットワーク構成ならノンインテリジェントタイプでも十分です。
QNAP QSW-M1208-8Cの短所を上げるならWeb管理画面が日本語非対応なので、直感的に操作しやすいユーザーインターフェースとは言え、インテリジェントスイッチの設定に慣れた人でなければ難しく感じます。
また、ターミナル接続によるコマンド設定もできないので、大量展開する必要がある企業のエッジスイッチには不向きですし、ネットワークスイッチの設定ミス次第では初期化する必要があるのが不便です。
そう考えるとQNAP QSW-M1208-8Cは、10Gbpsネットワークの検証や慢性的に不足しているサーバルームのスイッチのカスケード向けで、超高速通信を自宅で構築したいハイエンドユーザには、ノンインテリジェントタイプがおすすめです。
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