2.5GbEx10GbE対応エッジスイッチ注目株QSW-M2108-2Cの使いどころ

重いデータを取り扱う動画編集の現場では通信速度が作業効率に直結するので、次世代ネットワークの普及に期待したいところですが、10Gbpsの低価格化が進まない状況にストレスを感じている方が多いのが現状です。

特にネットワークセグメントが複数存在する企業は、L3スイッチ、フロアスイッチ、エッジスイッチ全てを10Gbps化しなければならないので、導入コストが足枷となりスモールオフィスよりも対応が遅れています。

仮に10Gbpsネットワークを構築したとして、ランダムアクセスが優勢なデータアクセスや、ストレージのディスク次第で速度が出ないなど、通信の高速化に踏み込めない材料が多いので判断が難しい状況と言えます。

高い10ギガの壁

超高速な10Gbps通信をフルに活用するには、ファイル共有を行うサーバやデータアクセスを行うクライアントのハードウェア性能、そしてファイルが動画などのシーケンシャルなものでなければなりません。

通信インフラを10Gbps化したとしても、どちらかのディスクがSATA規格なら6Gbps以上にはなりませんし、USB 3.2Gen 1×1のネットワークアダプターを使用すればそれだけで5Gbps止まりになります。

内線にIPフォンを使用している企業は特に注意が必要で、作業スペースに設置したエッジスイッチまで10Gbps化したとしても、ケーブルを中継接続する電話のポートが1Gbpsでは意味がありません。

電話がボトルネックならパソコンの配線と別々にし、ディスク規格がNVMe SSDなのはもちろん、USBアダプターを使うなら3.2Gen 2×1以上でなければならないなど条件が揃わなければなりません。

導入しやすい2.5Gbps

10Gbpsネットワークの帯域をフルに活用するには最新規格のパソコンやサーバが必要になりますが、理想から一旦目を逸らして2.5Gbpsに目を向けてみれば、古い世代のハードウェアでも十分に恩恵を受けることがわかります。

PCIe Gen4スロットを搭載したデスクトップパソコンや、USB3.x Gen2やThunderboltを搭載したノートパソコンが主流なら10Gbps環境を目標にするべきですが、過去の資産を長く使用したり当面のコストを抑えるなら2.5Gbpsがおすすめです。

全てのネットワークを高速化できるのが理想ですが、一般的な業務は2.5Gbpsで動画編集業務は10Gbpsにするなど、メリハリをつけて計画を練ることで予算を抑えながら効果的に移行することができます。

様々なメーカーから2.5Gbps対応ネットワークスイッチが発売されていますが、今回はNASで圧倒的な知名度を誇るQNAPのL2スイッチQSW-M2108-2Cの機能や使い勝手、そして使いどころについて紹介します。

既存ネットワークに柔軟対応

ここからは10Gbpsと2.5Gbpsに対応し、RJ45とSFP+のコンボポートを搭載したQNAPのL2ネットワークスイッチ、QSW-M2108-2Cの個人的に気になる仕様と操作方法、そして使いどころについて簡単に紹介します。

QSW-M2108-2C本体右側にはRJ45とSFP+のポートが4個あり、これらは10Gbps、5Gbps、2.5Gbps、1Gbps、100Mbpsに対応しているので、既存のネットワークスイッチやLAN配線を利用できるという柔軟さがあります。

ただし、10Gbpsに対応したポートはコンボタイプで同時に利用できるのは最大2個となりますので、サーバールームなど高速接続する機器が多い場所で使用する時は、より上位機種のモデルがおすすめです。

QSW-M2108-2Cコンボポート

左側に8個ある2.5Gbps対応ポートも1Gbsp、100Mbpsに対応しており、こちらも既存ネットワークとの接続も相性が良いので、将来的な通信環境の速度アップに備えて先行導入しても問題なく利用することができます。

ただしQSW-M2108-2CはPoE非対応で、LANケーブルから給電可能なIPフォンや監視カメラを接続する時はACアダプターが必要になりますので、オフィスのエッジスイッチとして使う時はその点だけ注意してください。

初心者に嬉しいWebマネージ

ネットワークスイッチの取り扱いに慣れていたり、大量展開したりする時はコマンドによる設定の方が断然便利ですが、QSW-M2108-2Cは初心者に優しいWEBによるマネージが可能な製品となります。

コマンドベースでネットワークスイッチを設定するには専門的な知識が必要ですが、QSW-M2108-2CのようにWEBマネージ管理機能があれば誰でも基本設定ができますし、手順書さえあれば高度な機能も使いこなすことができます。

QNAP Network Switch Manage

その気になれば基本のネットワーク設定だけでなく、VLAN、QoS、スパニングツリーもWEB管理画面から変更可能で、操作に慣れれば上位機種や他社製品でも同様の設定ができるようになります。

余談ですが、8個ある2.5Gbps対応ポートとなりにあるメンテナンスポートはメーカー専用なのか、シリアルケーブを接続してターミナルソフトを起動してみましたが、アクセスすることができませんでした。

エントリー向けなのに高機能

WEBベースでマネージ可能なQSW-M2108-2Cは、一部10Gbpsに対応した他社製品と同様にPoEに非対応ではありますが、IPフォンを展開している企業向けエッジスイッチに必須と言えるVLANとQoSの設定が可能な製品です。

それだけならネットワークスイッチで知名度が高い他社の製品でも構わないのですが、QSW-M2108-2Cは手頃な価格帯でありながらループ防止するスパニングツリーに対応しているのが大きな違いで、これだけでも導入するメリットがあります。

IPフォン環境ではスパニングツリーが役に立つ

座席移動した時にIPフォンからパソコンへ接続するべきケーブルをエッジスイッチへ戻してしまい、ループでネットワークをダウンさせるミスは割と起きやすいのですが、スパニングツリー機能があれば被害を最小限に抑えることができます。

他にもACL、LLDP、LACPに対応していますし、ダッシュボードにアクセスすれば通信状況をリアルタイムに監視することができるので、これから本格的なマネージドネットワークスイッチについて勉強したい人におすすめです。

気になる点

QSW-M2108-2Cを実際に実務で使用してみたところ、WEB管理画面の言語が日本語に非対応という点、シリアルポート接続によるコマンド設定非対応、ロク確認、特殊な形状のACアダプターを使用する点が気になりました。

公式サイトから日本語マニュアルがダウンロード可能ですし、操作しやすい管理画面なので基本的な知識がある方であれば何も問題なく設定できますが、ログが確認できないのと特殊な形状のACアダプターが少し気になります。

電源ケーブルが抜けてネットワークスイッチの電源が落ちることが稀にあるので、自由自在に向きを変えられて抜けにくいACアダプターは便利なのですが、特殊な形状故に替えの物が必要になると少し困るかもしれません。

QSW-M2108-2Cは設定ファイルのインポートとエクスポートが簡単にできますが、複数セグメントが存在するネットワーク環境では、管理コンソールからコマンドでコンフィグを確認したりIP変更できた方が楽な時もあります。

評価したい点

QSW-M2108-2Cの10GbpsポートにファイルサーバとNASを接続してバックアップジョブを実行していますが、毎週50TBを越えるデータ通信にも耐えているので、エントリ―クラスでも品質は高いと思いました。

エッジスイッチの導入で意外な落とし穴になるのがファンの騒音で、とある大手メーカーの製品を導入してクレームを受けた経験がありますが、QNAPのQSW-M2108-2Cはとても静音性が優れていて静かだと感じました。

QSW-M2108-2Cの便利なところは、コンボポートですがRJ45ケーブルとSFP+の両方が使える点で、サーバやNASのケーブルタイプを意識することなく10Gbps接続できる柔軟性は意外と大きなメリットになります。

2.5Gbpsと一部10Gbpsに対応し、スパニングツリー設定が行える企業向けネットワークスイッチが、この価格帯で購入できるのは珍しいことなので、購入する価値は十分にあるのではないかと思います。

使いどころ

QSW-M2108-2Cは10Gbpsポートが同時に最大2ポートまで利用できるタイプなので、サーバラックがある本格的な場所で使用するよりも、VLANでネットワークを構成した企業のエッジスイッチとして利用するのがおすすめです。

もちろんVLANを使用しないスモールオフィスでも利用できますが、有線LANの接続クライアントが10台未満の環境なら、スパニングツリーやQoSも必要ないのでオール10Gbpsに対応したノンインテリジェントのQSW-1208-8Cがおすすめです。

通信速度の大幅な向上とアクセスリストによるセキュリティ対策が必要なら、オール10Gbps通信とWEBマネージ機能があるQSW-M1208-8Cがおすすめですが、性能に見合うだけの価格になるので大規模展開には向いていません。

その点、今回紹介したQSW-M1208-8Cは、NASやメインスイッチへの高速アクセスを確保しつつ、既存配線を活用しながら段階的にネットワーク速度の改善を目指す企業におすすめの製品です。