システム管理を兼任する人に教えたい企業向けNAS製品の選び方

クラウド化が進むことで自社運用していた多くのシステムが社内から姿を消しましたが、それと同時に自社内でシステムを管理する人の数がかなり減りました。

ただ、全てのシステムをクラウド化するのはコスト的に難しいので、ファイルサーバだけは自社内で運用するという選択をする企業も多くあります。

そんな唯一残されたファイルサーバの管理は、専門家でもないのにIT担当任命されたので、仕方なく面倒をみているという人も多いのではないでしょうか。

ある意味慈善活動的に管理をしているファイルサーバなのに、データが消えただの復元して欲しいだの、他の利用者から依頼が多くて憤りを感じているという人もいます。

そこで今回は、不本意ながら専門外のファイルサーバの管理しなければならない人のために、これから導入すべきNASの選び方と、おすすめな製品について紹介します。

PCサーバとNASの違い

低価格で構築できるファイルサーバとして人気の企業向けNASを説明をする前に、まずは簡単にDellやHPでお馴染みのPCサーバとの違いについて説明します。

NASは低予算かつ専門的な知識がなくても構築できるので、中規模や小規模の企業で多く導入されていますが、価格が安いのにはそれなりの理由があります。

DELLやHPなどの本格的なサーバは、電源、メモリ、ネットワークなど、ディスク以外のハードウェアトラブルにも対処できる構成で造られているので、安価なNASよりも安心感という意味では大きな違いがあります。

搭載されているOSの違いで言えば、PCサーバは馴染みのあるWindowsを搭載できるのに対し、NASはLinuxをベースに独自に開発した管理画面を搭載しているという違いがあります。

慣れないNASの操作画面を勉強するよりも、日頃から操作していて慣れているWindowsを搭載しているPCサーバを選んだ方が良いと思うかもしれませんが、PCクライアントとサーバでは似て非なるものなので簡単な話ではありません。

PCサーバで利用者が数十人を越えるファイルサーバを構築する場合、Active Directoryなどの認証サーバの他に、DNSやDHCPなどのネットワークサービスを合わせて設定しなければなりません。

Active Directoryなしのスタンドアロンとしてファイルサーバを構築することは可能ですが、Windows Serverの恩恵を享受することができなくなります。

一方のNASも搭載されているOSがLinuxという馴染みのない物なので不安を感じるかもしれませんが、Linuxは安定性という意味では高い評価があります。

また、NASの操作や設定も特別な勉強をしなくてもできてしまうのが売りなので、専門的な知識のない人がサーバを管理するならNASの方がおすすめです。

ただ、NASの場合はコストを抑えるためにRAIDなどのシステムをソフトウェアで動かしているため、ファイルサーバに特化した製品と比べるとパフォーマンスの面でやや劣ります。

数十人の規模が同時にアクセスしたり一時的なデータの保存先として利用するのであればパフォーマンスが悪くても問題にはなりませんが、数百人が同時にアクセスするとなるとやや厳しいかもしれません。

NASにも高性能で多くの同時接続者数に耐えられる製品もありますが、NASを使用するケースは数十人規模のファイルサーバか、他のサーバのバックアップデータを保存するストレージとして利用されることが多いのではないでしょうか。

NASは予算のない企業の味方

数百人規模の企業であればPCサーバの構築をおすすめしますが、予算や人材の確保が難しい企業で20人や30人の利用であれば、専門的な知識のない方でも構築できるNASがおすすめです。

企業で使われるNASと言えばSynologyやQNAPが有名ですが、これらの製品はファイルの共有機能以外にも認証サーバやWebサーバなど、ファイルサーバ以外の機能が搭載されています。

SynologyやQNAPなどの企業で使われることを想定したNAS製品には、ディスクを冗長化させるRAIDはもちろん、削除したファイルを復元したり、他のサーバへ簡単にリアルタイムで複製する機能があります。

PCサーバで構築したファイルサーバを別サーバに複製する仕組みを構築するには、ある程度のシステム導入経験が必要になるくらいハードルがやや高いのですが、NASの場合は同じメーカーの製品があれば比較的簡単に設定できたりします。

PCサーバの導入はハードウェアの導入コストだけでなく専門家を雇用するための人件費が必要になりますが、NASは兼務でサーバを管理することができるくらい簡単に構築できるので、予算のない企業の強い味方です。

NASに高いパフォーマンスや堅牢性求をめない

PCサーバと比べると安価な割に高機能なので予算のない企業の強い味方になるNASですが、ハードウェアが強化されたPCサーバと比べるとパフォーマンスや堅牢性ではどうしても劣ります。

何度も同じことを言いますが、NASというのは低予算でファイルサーバを構築したり、バックアップデータを保存するのに適した製品なので、PCサーバの様な高いパフォーマンスや堅牢性を求めてはいけません。

RAID専用のボードを搭載するPCサーバに対し、ソフトウェアレベルでRAIDを構成するNASはどうしてもディスクの処理速度が落ちるので、PCサーバと同等のパフォーマンスを求めるのは無理があります。

また、一般的に中小企業で使われるNASは普通のPCと同じで電源が冗長化されていないので、電源が故障すれば利用できなくなるというリスクもあります。

NASにも19インチラックマウントに搭載するタイプは電源が冗長化された製品もありますが、この様な製品はそれなりに高価な上にサーバルームに置く物です。

低予算でファイルサーバを構築するためにNASを選択する人が購入する代物ではありませんので、ラックマウント式は比較対象から外してください。

購入するなら企業向けNASを

PCサーバと比べるとパフォーマンスがNASなので、それなら機能が同じで安価な家庭用の製品を購入した方がいのではないかと思うかもしれません。

ただ、企業で利用するNASを選ぶ時はデータを保存するためのディスク容量はもちろん、データを保護するためのRAID構成やホットスペアなども念頭に入れて選ばなければなりません。

また、同時に接続する人数のことや管理画面の快適な操作を考えると、ある程度高速なCPUやメモリを多く搭載することが重要になります。

一般的な家庭用で使用するNASでも少人数であればファイルの共有は可能ですが、ハードウェアのスペックが極端に低いとファイル操作や管理画面へのアクセスにストレスを感じるようになります。

100万円近くするPCサーバと比べると値段が安いとは言え、予算のない会社ではそう簡単に買いかえることはできないので、長く使うことを想定して企業向けの製品を購入してください。

NAS選びで最も重要なのは、RAIDやホットプラグ、ホットスペアが利用できるのはもちろん、ファイルの復元やバックアップ、レプリケーションなど、データを保護する機能が充実した製品を選んでください。。

基本的にどの製品のNASもRAIDやホットスペアなどに対応していますが、削除されたファイルを復元したり、他のNASへデータを複製する機能がないものは選ばないようにしてください。

新しく購入したファイルサーバも数年もすれば交換する時がきますが、その時にファイルのレプリケーション機能があると、移行がスムーズにできたりします。

QNAPなどのNASは、ディスクを本体から抜いて移し替えるだけでシステムの入れ替えができるので本体が壊れた時は有効ですが、古いディスクを入れ替える時には使えません。

SynologyやQNAPのNASはストレージ関連のツールが充実しているので、RAIDのディスクを1本ずつ交換してリビルドさせることもできますが、リビルドそのものがリスクの高い作業なのでおすすめしません。

PCサーバでもOSの標準機能やArcserve Replicationなどのソフトウェアを利用してレプリケーションをすることは可能ですが、コストがかかる上に入念なテストが必要になります。

Arcserve Replicationはレプリケーションする際に、帯域制限をかけることができるなどの高機能ではありますが、兼任者がマスターするにはかなり高いハードルがあります。

その点、SynologyやQNAPのNASにはレプリケーション機能が標準で搭載されているので、数年後のデータ移行を考えてこれらのメーカーの製品をおすすめします。

ドライブベイが多いNASがおすすめ

低価格なNASを利用するのに少し不安を感じるという方もいるかもしれませんが、冗長構成されたディスクが同時に壊れてしまうなどの不運が続かない限り、全てのデータが消えることは非常に稀です。

ディスクは必ず壊れるものなので、RAIDやホットスペアを設定するだけでなく、バックアップや他のサーバへレプリケーションすることも考えなければなりません。

予算のことを考えるとデータ複製用にNASを複数台購入するのは難しいとしても、データを保護するのに欠かせないRAIDという仕組みだけは必ず利用してください。

RAIDは基本的にどのメーカーの製品でも利用できる機能ですが、搭載可能なディスクの本数により利用できるレベルが異なるので注意が必要です。

NASを利用する人数や保存するデータの量にもよりますが、企業で使用するNASを購入するのであれば、より多くのHDDを搭載できる製品がおすすめです。

例えば、RAID1というディスク上のデータを常に同じ状態にする仕組なら2ドライブの製品でも利用できますが、ディスクが故障した時に自動的に切り替わるホットスペアという機能が利用できません。

仮にRAID1という仕組みで構成した場合、データ保存用に2本、ホットスペア用に1本、バックアップ用に1本、SSDキャッシュ用に2本など、快適性や堅牢性を求めると最低でも6ドライブ分のベイが必用になります。

もちろん、ホットスペアやSSDキャッシュ、バックアップ用のドライブは必須ではありませんが、価格を考えると買い替えが難しい製品なだけに必用なドライブベイの数は購入前に良く考えてから決めなければなりません。

因みに、SynologyのNASは内臓ディスクにバックアップデータを保存できますが、Qnapなどの製品は内臓のストレージにはバックアップできないことがありますので、NASのメーカー毎に構成が若干変わります。

考え方次第でRAIDレベルはかわる

ディスクを冗長化する機能にはいくつかレベルがあり、2本のディスクを常に複製するのが先程紹介したRAID1ですが、その他にもRAID5、6、10、50、60などがあります。

企業向けNASならRAID10、50、60での構成でストレージを構成できますが、これらのレベルでRAIDを構成するメリットは少ないので、今回はRAID6に限定して説明します。

2本のディスクが壊れてもデータが消えることのないRAID6という仕組みですが、ディスクの本数が増えた分だけ故障するリスクが高くなるので、考え無しに無計画にRAID6でストレージを構成するのはおすすめしません。

ハードディスクの容量が少ない時代に大容量のストレージを構築するのに有効なRAID6ですが、HDDの容量が10TBを越えた今の時代に、少人数で利用するファイルサーバに無理に使う構成ではないのかもしれません。

ただ、先程も説明した通りドライブベイが多ければその分だけ選択肢が増えますので、RAID6を構築できる数のHDDを搭載できる製品を選ぶことをおすすめします。

おすすめの企業向けNAS

今まであらゆるメーカーのNASを導入してきた経験を踏まえ、専門外の方に利用してもらいたい企業向けの製品を紹介するなら、迷わずSynologyやQNAPをおすすめします。

これらのメーカーの製品は企業で広く使われるNASでありながら、家庭での利用も想定された製品なので、初心者の方にも簡単に操作することができます。

海外の製品は非常にわかりにくいメニューや説明の物がありますが、QNAPやSynologyは非常に解りやすい設定画面です。

個人的におすすめな製品はSynologyのNASで、8ドライブ搭載可能なSynologyのNAS DS1817+が12万円前後の価格で購入できます。

5ドライブのDS1517+が10万円前後、PentiumDを搭載した6ドライブのDS3018xsが19万円前後することを考えると、 DS1817+はドライブベイが多い割に比較的手ごろな値段で買える製品です。

2ベイのDS718+が5万円前後することを考えると、半端なドライブベイのNASを購入するより、汎用性の高い8ドライブの DS1817+がおすすめです。

おすすめのHDD

因みにNASには本体のみ購入して自分でHDDを搭載するタイプと、予めディスクが搭載された製品もありますが、余程の理由がない限り本体単体での購入をおすすめします。

予めHDDが搭載された製品のなかには、純正のディスクしか利用できない物もありますし、信頼性の低いディスクが搭載されていることもあります。

全二重で動作するSASドライブよりも若干信頼性は劣るかもしれませんが、NAS専用のディスクを自分で選んで購入した方がある意味納得できたりします。

おすすめのNAS用ディスクはWesterndigitalのREDで、今まで40本以上利用していますが、過去7年間で1本のディスクしか故障したことがありません。

他にもHGSTのディスクも壊れていないのでおすすめではありますが、WDのREDと比べると若干熱くなる傾向があるので、涼しい環境で利用されることをおすすめします。

また、高速なディスクのアクセスを考えると10,000回転以上の製品を購入したくなりますが、熱暴走やディスクの障害を抑えることを優先するなら、5,400rpmもしくは7,200rpmのディスクをおすすめします。

HDDの回転数を抑えることでNASへのデータ書き込みや読み込みに不満を感じるのであれば、空きドライブにSSDをセットしキャッシュとして設定されることをおすすめします。



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