SynologyのNASには、Plus、Value、J、FS & XSという4種類のシリーズがあるのですが、ハードウェアスペックの違いだけでなく利用できる機能にも大きな違いがあるので、購入する前にどの用途に向いているのか確認することが大切です。
例えば、家庭内で使用するホームサーバのエントリー向け製品であればJシリーズ、中小企業やハイエンドなNASを家庭内で使用したいのであればPlusシリーズなど、利用規模や目的に合わせてシリーズを選ぶ必要があります。
そこで今回は、SynologyのNASのシリーズで主に中規模や大規模の企業で使用する、ウルトラハイスペックなFS & XS シリーズ11製品全て比較し、ハードウェアや機能の違いなどについて説明します。
ウルトラハイスペックなNAS
ひと昔のNASと言えば、一般的なPCには使われない性能の低いCPUや少ないメモリで動作する物でしたが、SynologyのNASにはDellやHPなどの一般的なサーバーと同等なウルトラハイエンドなNASがあります。
FS & XS シリーズのNASは人数の多い企業で使用することを想定して作られているので、例外はあるものの基本的に19インチラックにマウントして利用する様に設計されています。
一部Pentium Dを搭載している製品もありますが、FS & XS シリーズはIntel XeonのCPUを搭載しているだけでなく、最大メモリが512GBまで増設可能なモデルや、オプションユニットで最大2,160TBのストレージが利用できる製品もあります。
FS & XS シリーズのNASは家庭用とは次元の違うウルトラハイスペックな製品ばかりですが、一部SASのHDDに対応していないモデルや10GEネットワークに対応していない製品もあるので、仕様を確認するのが鉄則です。
FS & XS シリーズハードウェア比較
ここで紹介するFS & XS シリーズのハードウェア比較表は、画面の関係上必要な情報を一部抜粋し4製品毎に分けて紹介していますが、表の内容が解りにくい場合は記事後半にある全機種一覧の画像をプリントしてください。
この表は、FS1018、FS2017、FS3017、RS18017xs+の基本的なハードウェア性能をまとめた物ですが、FS1018を除いた他の製品は全て19インチラックにマントする仕様となります。
どの製品もホットスワップやSSD TRIMやSSDキャッシュに対応していますが、ディスクが2.5インチSATA SSDのみ対応している製品や、全ての規格のディスクに対応している製品など違いがあります。
2.5インチSATA SSDにのみ対応しているFS1018ですが、未だSSDが高価だという現状を考えると手を出しにくい製品なので、タワー型なら3.5インチのSATAディスク搭載できるDS3617xsがおすすめです。
ただ、中規模や大規模で使用するサーバだということを考えると、タワー型はSASディスクが搭載できない点や電源の冗長化がされていないので、他のファイルサーバのバックアップに使用するのがおすすめです。
DS3617xsは本体価格が30万円と、DellやHPなどの本格的なサーバよりもコストが圧倒的に安いので、2台のサーバーを購入してサーバーを複製すれば障害リスクにも対応することができます。
今までの経験ですが、DellやHPのサーバも電源が冗長化されていない製品に限り故障したので、大切なサーバの電源は必ず二重化にしていますが、バックアップ用のストレージは電源ひとつで十分です。
こちらは、RS4017xs+、DS3617xs、RC18015xs+、RS3617RPxsの基本的なハードウェア性能をまとめた物ですが、こちらもDS3617xs以外は全てラックマウント式のサーバとなります。
SynologyのNASは、モデル名にRS & RCのあるシリーズがラックマウント式のサーバで、モデル名にDSのあるシリーズがテーブルや棚の上に置いて使用するタイプのサーバとなります。
ただ、FS1018の様にラックマウントタイプのサーバの他に、デスク上に置いて使用するNASもあるので、今後の新製品ではRSシリーズでもラックマウント以外の機種が登場するかもしれません。
RC18015xs+シリーズは唯一2.5インチと3.5インチのSASドライブに対応している製品ですが、high-availabilityクラスタ構成で運用するので2台のRC18015xs+と最低でも1台のRXD1215sas拡張ユニットが必要となります。
ディスクを必要としないRC18015xs+本体が約13万円なので、2台のクラスタ構成にしても約26万円と比較的手頃な値段ですが、RXD1215sasは1台が約80万円もするのでセットで購入すると本体だけで約100万円します。
更にSASディスクはニアラインでも大容量だと1本で10万円もするので、最大12本のディスクを搭載できるRC18015xs+は、余程の理由がない限り導入するのは難しいのではないでしょうか。
高額なサーバ環境をNASで構築するよりも、Windows ServerやLinuxが動くDellやHPなどの汎用性の高いサーバを導入した方が良さそうですが、複数のWebアプリを動かす時に使えそうです。
こちらは、RS3617xs+、RS3618xs、DS3018xsの基本的なハードウェア性能をまとめた物ですが、どれもSATA接続のディスクのみ対応なので、大規模なファイルサーバとして使うにはやや不安です。
ただ、今までの経験で言うと、SASディスクでも3年以内に故障することは良くあることですし、SATAディスクでも2,000日以上経過しても故障しないディスクもあるのも事実です。
SASディスクは、故障率の低さや全二重のパフォーマンスでSATA規格のディスクよりも優れていますが、絶対に故障しないという訳ではないのでレプリケーションやバックアップが重要になります。
ハードウェア構成にもよりますが、DellやHPのサーバでクラスタ構成にするとNASの2倍以上のコストがかかるので、あまりコストをかけられない企業にNASはおすすめです。
ただし、DellやHPなどのメーカーでディスクの障害が発生した場合はサポートで対応してもらえますが、QNAPやSynologyのNASは全てユーザが対応しなければならないというデメリットもあります。
ただ、大手PCメーカーのサポートも壊れたディスクの交換はしてくれるもののデータの保証はしませんし、古くても正常に動作しているディスクの交換はしてくれませんので、最終的にはユーザが作業することになります。
ディスクを交換する際にいくつかの手順が必要となるDellやHPのサーバよりも、ディスクを抜き差しするだけで交換ができるSynologyのNASの方が、結果的に便利に感じる時があります。
FS & XSシリーズ機能比較
ここからは、NASの肝となる機能について比較した内容を紹介しますが、Synologyの製品は機種により利用できる機能の違いがあるので、目当ての機能が利用できる製品なのか購入前に確認することが何よりも大切です。
機能に違いがあるのは大企業で使うFS & XSシリーズも例外ではありませんが、FS2017やFS3017を除いては基本的にどの機種も同じなので、ハードウェアスペックを基準に製品を決めるのも良いでしょう。
FS2017やFS3017は、ホームサーバで使えると便利なiTunes Server、Video Station、DLNA CertificationやComplianceに対応していませんが、企業活動で使用するサーバなら必須ではありません。
FS & XSシリーズのNASは企業で使用するサーバなので、High AvailablityやActive Backup for G Suite、Active Backup for Office 365、Virtual Managerなどに対応しているかが重要です。
正直、Windows Server以外でActive Directory Serverを構築するのはリスクが高いですし、VPN Serverも最大接続数が30とSonic WallなどのUTMと比べると少ないので、おまけ程度で考えた方が良さそうです。
因みに、DLNA CertificationtとDLAN Complianceの違いを簡単に説明すると、 Certificationtが正式に認証を受けたもので、Complianceは準拠した互換という意味ですが、一般的な業務で使用することはありません。
CertificationtよりもCertificationtの方が言葉の意味では信頼性が高いのですが、Certificationtだからときちんと動作するとは限らないので、DLAN目的でFS & XSシリーズのNASを購入するのはリスクがあります。
FS & XSシリーズのNASは基本的にどの機種も利用できる機能が同じなので、これ以上詳しく説明する必要はありませんが、Plusシリーズを除くValueシリーズやJシリーズは利用できない機能が多いので購入の際には注意が必要です。
こちらは、2018年7月現在発売されているFS & XSシリーズ全機種の一覧表ですが、拡大してご覧になりたい方はプレビュー画像をクリックするかダウンロードして印刷してください。
バックアップ専用ストレージなら
大規模で使用するファイルサーバの様なSASディスクや電源の冗長化を必要としないバックアップ用ストレージに使用するなら、本体容量が最大144TBでオプションの10GbEネットワークに対応するRS3618xsがおすすめです。
RS3618xsは19インチラックにマウントさせるタイプなので、デスクや棚の上に置いて利用するならDS3617xsがコストも若干安いので、ご利用環境に応じて選択してください。
シングルボリュームサイズが最大108TB迄で良ければPlusシリーズのDS1817+でも良いのですが、増設可能なメモリが16GBと若干少ないので、大容量のストレージを構築した時にパフォーマンスに影響が出る可能性があります。
NASは価格が安いだけにハードウェアRAIDが搭載されていないのですが、大容量のストレージはシステムのリソースを大量に消費することがあるので、メモリをできるだけ多く搭載してください。
ファイルサーバで使用するなら
スタッフの人数が多い企業のファイルサーバとしてSynologyのNASを導入するのであれば、ラックマント式でSAS HDDや標準で10GbE LANに対応した、RS18017xs+をおすすめします。
ファイルサーバは堅牢性が何よりも重要で、SASドライブに対応しているのは当然のことですが、ディスクの次に壊れる可能性の高い電源が冗長化されている機種を選ぶのが大切です。
DellやHPなどの製品は24時間サポートに加入すれば、ハードウェアが故障しても4時間以内に対応してくれますが、海外に拠点のあるSynologyやQNAPのNASは即対応という訳にはいきません。
サポートにかかる時間は課題ですが、その分コストを抑えて導入できるというメリットがあるので、最低限電源を二重化にしたりRAID-6とホットスペアを設定するなど、トラブル発生時に慌てない構成にするのが大切です。
今回は中規模や大規模で使用するFS & XSシリーズに限定して製品の比較を行いましたが、PlusシリーズやJシリーズなどの小規模オフィスや家庭で使用する製品についても比較を行います。
家庭用ホームサーバだけでなく企業でも広く使われているSynologyのNASには、利用目的やターゲット別に区分された4つのシリーズあるのですが、その特長を理解しないと製品選びに失敗してしまうことがあります。企業で使用するNASなら、[…]