家庭用ホームサーバだけでなく企業でも広く使われているSynologyのNASには、利用目的やターゲット別に区分された4つのシリーズあるのですが、その特長を理解しないと製品選びに失敗してしまうことがあります。
企業で使用するNASなら、ウルトラハイエンドなFS&XSシリーズや万能なPlusシリーズを購入すれば安心ですが、必要以上なスペックや機能の製品を選ぶと無駄な出費になることもあります。
逆に家庭で使うNASだからと価格を抑えたValueシリーズやJシリーズを選んでしまうと、利用できない機能やスペック不足に憤りを感じることもあるので、機種の比較はとても重要です。
そこで今回は、SynologyのNASシリーズでも家庭だけでなく企業でも使えるハイエンドなNASの位置づけとなるPlusシリーズ全機種を比較し、おすすめの使い方や利用シーン毎におすすめな製品について紹介します。
Plusシリーズは企業や家庭で使える万能なNAS
機能が豊富でハイスペックなPlusシリーズは、企業やハイエンドな家庭用ホームサーバーとしておすすめですが、ハードウェアコード変換などの機能が搭載されていない機種もあるので、購入前の比較はかなり重要です。
PlusシリーズにはFS&XSと同様、企業で使用することを想定したラックマウント可能な製品もありますが、Intel XeonのCPUを搭載した機種がないので、中規模以下の企業での利用かハイエンドなホームサーバとしておすすめです。
こちらの比較表は2ドライブから4ドライブベイ製品のハードウェアスペックを比較した内容ですが、ラックマウント可能なRS818+を除くと搭載可能なメモリが従来のサーバ製品と比べると若干少ないのですが、家庭で使用するなら十分なスペックです。
ハードウェアコード変換機能は、Canon iVISなどのビデオカメラで撮影したAVCHD形式の映像をスマートフォンで再生させる時に高速に変換する機能なので、ホームビデオユーザーはハードウェアコード変換を搭載した機種がおすすめです。
ビデオカメラで撮影した映像をスマートフォンなどで楽しむならハードウェアコード変換機能があると快適に使えるので、家庭内使うならデスクに据え置きするタイプのDS218+やDS718+、DS918+がおすすめです。
因みに、RS818+は10GbEのネットワークに対応していますが他の3機種は対応していませんので、高速な通信を必要とする大容量なファイルサーバのバックアップストレージには向いていません。
1Gbspというネットワークの速度はUSB3.0の20パーセントの速度なので、中規模以下の企業で利用するファイルサーバやハイエンドな家庭用NASとして利用するのがおすすめです。
試に約10TBのファイルサーバのデータをiSCSIで接続したストレージにフルバックアップしたところ、検証を含めて4日近い時間がかかりましたので大容量のサーバは10Gbps対応のNICがあると便利です。
DS918+には高速な読み書きができるM.2 SSDをキャッシュとして使用するスロットがありますが、通信速度が最大で1Gbpsということを考えると必ずパフォーマンスが向上するとは言えません。
M.2 SSDはストレージとして使用することができませんので、64GB以下の小容量で安価なM.2 SSD製品を購入し、同時アクセスするユーザーの多い企業や最高のNAS環境を構築したいヘビーユーザーがご利用ください。
こちらは、DS218+、DS718+、DS918+、RS818+の機能を比較した表ですが、PlusシリーズはValueやJシリーズとは違い多くの機能を利用できますが、DS218+シリーズはHigh Availability Managerには対応しておりません。
High Availability Managerは、NASを冗長化させてダウンタイムを極限まで少なくする仕組みなので企業活動では重要な機能になりますが、NAS単体で使用するなら対応していなくても問題ありません。
DS218+はOSの仮想化機能が利用できないので他機種よりも機能面で劣りますが、他の製品も最新サーバOSに対応していない物が多いので、仮想化以外のポイントをチェックした方が良いでしょう。
例えば、同じ2ドライブタイプのNASでもDS218+は有線LANが1ポートなのに対しDS718+は2ポートありますし、共有フォルダを同時に同期する数もDS218+は4なのに対しDS718+は8という細かな違いがあります。
続いてこちらは、5ドライブベイのDS1515+、6ドライブベイのDS1618+、8ドライブベイのDS1817+、12ドライブベイのRS2418+のハードウェア性能を比較した一覧の表となります。
こちらの4機種は全てハードウェアコード変換に対応していませんが、オプションで10Gbpsネットワークに対応していることを考えると、企業で使用することを想定して製品です。
ただ、CPUが全て4コアのIntel Atomとなるので、スモールオフィスなどの少人数で利用するファイルサーバか、サーバのバックアップ用ストレージとして使用するのがおすすめです。
5ドライブベイであるDS1517+はM.2 SSDキャッシュに対応していませんが、4本のディスクをRAID-6として構成し、更にホットスペアを設定できるという痒い所に手が届く便利な製品です。
こちらの4機種は全て仮想化に対応していますが、Windows Server 2016などの最新OSに対応していない製品もあるので、無理にNAS上で仮想OSを動かす必要はなさそうです。
ラックマウントタイプのRS2418+は電源の冗長化やオプションで10Gbpsのネットワークに対応している製品ですが、CPUがAtomという点やSASドライブに未対応なのを考えると企業で使うには中途半端な機種です。
中規模以上の企業で使用するNASとしては力不足を感じますが、PlusシリーズはActive Backup for Serverなどのバックアップ機能が充実しているので、FS&XSシリーズよりもコストを抑えて導入したい企業におすすめです。
そして最後に、12ドライブで据え置きタイプのDS2415+とラックマウントさせて使用する16ドライブのRS2818RP+ですが、ドライブ数を考えるとこちらも企業向けの製品と言えます。
10Gbps未対応のDS2415+はスモールオフィスでのファイルサーバとして利用し、RS2818RP+は高いパフォーマンスや堅牢性を必要としない小規模や中規模企業のファイルサーバやバックアップストレージに使えます。
SASのディスクはSATAよりも堅牢性やパフォーマンスで優れていると言われていますが、大容量のストレージを導入する場合に大きなコストの負担になりますし、バックアップだけではデータ保護に不安が残ります。
そこで、比較的安価なRS2818RP+を2台購入しレプリケーションするという方法も考えられますが、そこまでコストをかけるならFS&XSシリーズのRS3617xs+を購入した方が良いのではないかと個人的には思います。
Plusシリーズはハードウェアの機能に若干の差があるものの、ドライブ数の多い機種は機能の違いに大きな差はありませんので、本体の性能やオプションの有無で選ぶのが良いのではないでしょうか。
PlusシリーズのNASを買うなら
全てのPlusシリーズは、WindowsサーバのデータをNASに保存するActive backup for Serverや、Active Directory Server環境の構築など企業でNASを活用使用するための機能が数多く搭載されています。
個人的には19インチサーバラックに搭載する企業向けの製品には魅力を感じませんが、その一方で据え置きタイプのNASは他の家庭用NASにはないハードウェア性能と機能があります。
大容量を必要としないスモールオフィスのファイルサーバや、小容量のバックアップストレージとして購入するのであれば、ディスクを4本搭載してRAID-1とホットスペア+内蔵ドライブにバックアップできるDS918+がおすすめです。
家庭で使用するホームサーバであれば、RAID-1という最低限のディスク冗長構成ができるDS718+がおすすめですが、こちらは内蔵ドライブにバックアップができませんので、予算に余裕があるならDS918+をご検討ください。
2ドライブのNASを購入したものの、バックアップ用に外付けHDDのドライブをUSB接続にすると配線が気になりますし、DS718+と価格差があまりないことを考えるとシンプルな構成になるDS918+がおすすめです。
SynologyのNASには、Plus、Value、J、FS & XSという4種類のシリーズがあるのですが、ハードウェアスペックの違いだけでなく利用できる機能にも大きな違いがあるので、購入する前にどの用途に向いているのか確認すること[…]