企業向けミドルレンジ最強NAS QNAP TS-873パフォーマンスレポート

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NAS 最強ハードウェアのQNAP NAS

今回は外付けハードディスクに保存されている映像データを効率安全に共有するために、10GbpsのSFP+ネットワークカードが搭載可能な、企業向けミドルレンジ最強クラスのNAS QNAP TS-873を購入しました。

新4K・8K衛星放送などの大容量な映像データを単純に保管するだけならLTOテープが一番ですが、頻繁に再利用するデータはネットワーク経由でアクセス可能なサーバーに保存した方が断然作業効率が上がります。

ただ、大容量の映像データをUSB3 Gen1よりも遥かに遅い100Base-Tや1GbEのネットワークでアクセスするのはストレスを感じるので、QNAPのNASにSFP+のネットワークを搭載してみました。

今回の検証に使用したのはQNAP TS-873で、PCI Express Gen3のスロットにSFP+のネットワークを増設し10Gbpsネットワークに対応させたり、M.2 SSDをキャッシュとして利用できるのSMBミドルエンド最強クラスのNASです。

拡張性が高い最強クラスのNAS

QNAP TS-873は、3.5インチや2.5インチディスクを8本搭載できる他、2本のM.2 2260/2280 SATA SSDや、PCI-Express3.0 x4を2スロット搭載可能な、拡張性の高いミドルレンジ最強のNASです。

こちらはNASのドライブベイを全て外して撮影した製品の内部ですが、HDDのトレイがオールプラスチック化されているのと、使われている部品が少なく構造がシンプルなので、本体価格が安く設定されています。

今回は10TBのWestern Digital NAS用HDDを5本購入したのですが、NASの本体価格が13万5千円なのに対しハードディスクが20万円と、コストがかかるのはストレージの方でした。

こちらの写真はTS-873の背面で、1GbEのネットワークが4ポート、USB3.0が3ポート、3.5mmダイナミックマイクジャック、3.5mmラインアウトジャックとNASには珍しいスピーカーが搭載されております。

驚いたことにシステムの起動やシャットダウンを英語の音声で知らせてくれたのですが、自分で操作して実行していることなのであまり意味を感じませんが、今までの無機質なビープ音良さげです。

次の写真は16GBのメモリを4本搭載可能なスロットと、M.2 2260/2280 SATA SSDを搭載することのできるスロットがCPUクーラーの近くに2本あり、ディスクキャッシュとして利用できます。

10GbEに対応したバックアップ用のNASにM.2 NVMe SSDをキャッシュに設定して使用していますが、バックアップ元のサーバがHDDを搭載していたりサイズが小さいファイルが多いと費用に対する効果は感じません。

こちらはTS-873のカバーを開けると取り付けられるPCI-Express Gen3の拡張スロットで、SFP+ネットワークカードの他にNVMe SSDを取り付けて、最強NASを更にパワーアップさせることができます。

今回拡張スロットに取り付けたSFP+ネットワークカードはQNAPの互換リストには含まれていない製品で、Intel 82599ESコントローラーを搭載したシングルポートのX520-DA1です。

X520-DA1は、SFP+対応NICのなかでは比較的安価に買えるシングルポートのPCI-Express Gen2 x8対応製品で、M.2 NMVe SSDを搭載したサーバで検証したところ10Gbpsフルに性能を発揮しました。

10Gbpsネットワークは、NICやネットワークスイッチが10Gbpsに対応しているのはもちろん、ファイルを保存しているサーバやデータにアクセスするPCも10Gbpsの速度を越えるディスクを搭載していなければなりません。

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こちらはQNAP TS-873に搭載したWestern DigitalのNAS向けHDDで、10TBを5本搭載しRAID-6で構築ストレージを構築してみましたが、やはりディスクの速度がボトルネックになりました。

QNAP TS-873はSSDをキャッシュにするのはもちろん、自動階層技術であるQtierを利用できるので、条件次第ではパフォーマンスが改善されますが体感できる程の効果は望めません。

NASへのアクセスを高速化させるにはネットワークのスペックアップも重要ですが、ランダムアクセスに強いSSDをNASだけでなくPCクライアントの方にも搭載させる必要があります。

こちらは、TS-873のNASをiSCSI接続しDドライブとして認識させてからCrystalDiskMarkを使用したベンチマークの結果ですが、10GbpsのSFP+ネットワークカードを搭載した意味は正直感じられない結果となりました。

連続したデータの読み書きだけならそれなりに納得できる数値なのかもしれませんが、実際に運用しているファイルサーバの共有フォルダには、細かなファイルが沢山あるので1Gbpsを下回ることが多くあります。

因みに、HGSTの7,200回転HDDを搭載したSynologyのDS1817と比較すると、4K QD32の数値は高くなりましたが、Seqの書き込み速度が激しく低下するなど、使用するディスクにより結果が異なります。

Synology DS1817は標準搭載されている10GbEを利用していたりCPUやメモリの量も違うので正確な比較にはなりませんが、いずれにせよNASにSATA HDDを使用している限り高速なアクセスは望めません。

ただ、ファイルサイズやアプリケーション次第ではHDDでも4Gbpsを越える帯域に到達することもあり、ファイルサーバのバックアップ時間が大幅に短縮されたので、全く意味がないという訳ではありません。

今後はSATA SSDの低価格化や大容量化が進んだり、新4K・8K放送のテレビ番組の録画でNASにも高いパフォーマンスを求められることを考えると、拡張スロットでNASを強化できるTS-873は大変おすすめです。

TS-873は企業内で利用するファイルサーバやバックアップ向けの製品なので家庭向けの製品ではありませんが、本体価格がノートPC1台分の価格で買えることを考えると、映像を趣味とする方にもおすすめです。