脱MS Officeを目指して真剣に互換ソフトで提案資料を作成してみた

Officeのサポート期限が切れるからと、何も不自由を感じていないソフトのバージョンアップに5万円以上の費用を出すのに疑問を感じて、脱MS Officeを真剣に検討してみることにしました。

MS OfficeのExcelやAccessはとても優れたソフトなのは間違いありませんが、最新バージョンにしたからと業務効率が格段に向上する訳でもありませんので、投資に対するメリットをあまり感じていないが正直な気持ちです。

ただ、脱MS Officeを目指すからと、WordはもちろんExcelやPower Pointなどの業務に欠かせないソフトとの互換性が低くては意味がありませんし、操作性が悪くなるのも論外です。

そこで今回は、Office365への移行やOffice 2019への移行を回避すべく、Office互換ソフトのデータ互換や操作性を検証するために、プレゼンテーションソフトで30ページ以上の資料を作成してみました。

本当は今のOfficeを使い続けたい

MS WordはともかくExcelやAccessはとても優れたソフトウェアなのは間違いありませんが、複数のファイルからデータを集計することが苦手なExcelや、少人数の同時アクセスしかサポートしないAccessに限界を感じることもあります。

一度は、脱Excelを目指してサイボウズのキントーンの導入を考えたこともありますが、コストの問題や外部企業とのデータ共有にExcelが欠かせないことを考えると、Excelをなくすことは現実的ではありません。

新バージョンのMS Officeでも業務効率はあまり上がらないのでOffice 2010を使い続けるのが一番なのですが、個人情報や機密情報を扱う企業がサポート期限の切れたソフトウェアを使い続ける訳にはいきません。

家庭内で履歴書や家計簿を作成したり取引先のない企業なら何でも良いのかもしれませんが、一般的な企業活動を行うオフィスならデータ互換や信頼性を無視することはできません。

G Suiteを利用している企業なら、ドキュメント、スプレッドシート、スライドでOfficeの代替えが可能か試していると思いますが、そう簡単に物事が進まないのが脱MS Officeの難しさです。

互換ソフトのレベルの高さに驚く

漫画喫茶などのPCにはキングソフトのソフトがインストールされているので、昔からOffice互換ソフトを操作したことがありますが、当時は本気で業務に取り入れようと考えたことはありませんでした。

Office 2007が発売された当初も、あまりにも悪い操作性に一度はOpen OfficeやLibre Officeへの移行を考えてみましたが、Office 2007以上に使いにくい操作性とデータ互換の問題で移行を断念したことがあります。

Office 2010が登場してからは操作性が大幅に改善されたので、業務の標準ソフトとして展開して何不自由することなく使用してきましたが、そのOffice2010も2020年にサポート期限が終了します。

今でもOpen OfficeやLibre Officeを取り入れている地方自治体がありますが、コストダウンと引き換えに作業効率を落とすことは企業ではありえないことなので、本気で互換ソフトの検証を行いました。

マクロを多用するなら使えない

幸か不幸かExcelのマクロを作成する高度な仕事をしないので、互換ソフト移行のハードルはかなり低いのですが、もしマクロを多用する企業であれば互換ソフトへの移行は慎重に検討しなければなりません。

キングソフトのWPS Officeは、操作性やデータ互換は全く問題ないレベルでマクロの作成もできますが、Excelのマクロ機能を網羅していないため動作しない可能性が高いと言えます。

ジャストオフィスはマクロ作成の機能はありませんが、読み込むだけであればかなりのマクロが動作するので、マクロ重視の企業ならジャストオフィスがおすすめです。

G Suiteのスプレッドシートにもマクロ機能が実装されましたが、サーバの負荷を抑えるために6分以上動作するマクロは強制終了されるので、マクロ重視ならG Suiteは対象外となります。

マクロ動作の本命で言えばジャストオフィスですが、この製品でも完璧に動作するものではないので、多くのユーザーがマクロを利用する企業や動作検証や修正する余裕がないのなら、無難なMS Officeをおすすめします。

データ互換が高く操作に違和感がない

今回のMS Office互換ソフトの検証で個人的に高く評価しているのが、キングソフトのWPS OfficeとジャストシステムのWPS Officeで、その他のOffice互換ソフトは様々な理由で評価対象から除外しました。

低価格なOffice互換ソフトの品質が高い以上、Libre OfficeやApache Open Officeの存在意義は昔よりも薄れてきましたし、業務効率の低下を考えると評価の対象に含むのは難しくなります。

他にも、EI OfficeやThinkfree Office NEOなどの有料互換ソフトもありますが、メーカーサイトをみると不安に思うことがあり、今回は評価の対象から外すことにしました。

ジャストオフィスが県庁などでも採用されている国産ソフトなのに対し、キングソフトのWPS Officeは中国製という点で、企業で使うのは難しいかもしれませんが、とても品質の高いソフトです。

残念なことにジャストオフィスは企業だけに販売している製品で今のところ個人が購入することはできませんので、Office互換ソフトを求めるならWPS Officeとなります。

因みに、WPS OfficeをインストールするとESETが望ましくないアプリケーションとして検知し、アップデートプログラムを削除してしまいますが、これはウイルスではありません。

ESETに問い合わせて確認したところ、ウイルスではなく好ましくない挙動をしているだけなので、ソフトウェアをインストールする人の考え方次第でファイルを削除するか復元してくださいとのことでした。

操作性は本家よりも優れている

WPS Officeやジャストオフィスでプレゼン資料を作成してみましたが、操作性は全く同じどころか本家のOfficeよりも使いやすく改良された点があり、ストレスを感じる部分はありませんでした。

正直、あまりにも操作方法やUIが似ているので、導入後にMSからクレームになるのではないかと心配するくらいで、法的に問題がなければ価格メリットの高いOffice互換ソフトの方が魅力的です。

残念ながらジャストオフィスは手元にないので、昔勤めていた会社のPCを借りて3時間ほど作業させてもらう程度の検証しかできませんでしたが、WPS Officeよりもセーブが速くクリップアートが豊富なのでとても便利でした。

価格を考えるとWPS Officeの方が魅力的ですが、ジャストオフィスにはPDF編集機能やATOKなども付属していますし、国産ソフトということで官公庁の指定ソフトになる可能性もあります。

個人向けライセンスが販売されていないのが残念ですが、新バージョンごとにサポート期間が短くなるMS Officeより、長く使えるジャストオフィスの方がコストメリットはかなりあります。

ただ、あまりにもMS Officeと似ているUIはリスクのひとつでもあるので、その点をどのように捉えて企業内の標準オフィスソフトとして展開していくのか考える必要があります。

Office互換ソフトの限界

Office互換ソフトの導入を検討する上で一番の障害になるのがAccessで、G Suiteを含めてWPS Officeやジャストオフィスにもデータベースソフトは含まれていません。

家庭でAccessを使う人は希だと思うので、Word文書の作成やパワーポイントのプレゼン資料を作るならOffice互換ソフトでも十分ですが、ジャストオフィスは個人向けにライセンス販売をしていないのも欠点のひとつです。

マクロ以外にもMS Office互換ソフトを検証していて感じた限界はUIで、MS Officeを意識するあまりそれ以上の使いやすい製品が生まれることは決してないことです。

今のMS OfficeもUIを大幅に変更するメリットはないと思うので、最新バージョンでも同じような操作性ですが、その代わりにOffice365ならExcelで共同編集ができたり、大容量のストレージを使えたりします。

既存Office製品バージョンアップでも生産性が上がらない代わりに、どこでも作業のできるストレージや複数の端末にインストールできるライセンス形態は意外とメリットがあります。

今まで自宅のPCにインストールするPCは自前で購入していたという方も多いかと思いますが、これが会社の経費で使えるとなるとパソコンを買う費用を抑えられて大助かりです。

Adobe CCをはじめOffice365などの月額・年額払いのアプリサービスは正直好きになれないので、脱MS Officeを真剣に考えてたどり着いたのは、Office365という結論でした。

結局のところOffice系アプリの操作性や生産性の向上は既に限界を迎えていて、オンラインストレージなどの付加価値で差別化をしていかなければ勝負できない時代なのだと今回の検証で強く感じました。

Office365も社員数が多いとかなりの負担になるので、業績が好ましくない企業は無理せずに互換ソフトの検討をすすめますが、そうでないのならOffice365にすることをおすすめします。