スマートフォンカメラで撮影した写真や動画を安全に残すには、家庭内のネットワークや外出先からアクセスできるNASがおすすめですが、単純にデータを残すだけの製品もあるので注意してください。
リビングの大画面テレビで家族で思い出の写真や動画を再生したり、寝ながらスマートフォンで子供の写真を整理してみたりと、今時のNASはPCがなくとも楽しめる製品がおすすめです。
NASの世界を長年リードしているのは、ホームユーザーだけでなく企業でもシェアが高いSynologyとQNAPの2社で、他社の製品とは比べ物にならないくらい高い性能と信頼性、そして機能が充実しています。
最強ホームサーバ対決
様々なメーカーのNASを約30台近く導入しましたが、ハードウェア性能やディスクの互換性、そして管理画面の操作性や機能を総合的に評価すると、SynologyとQNAPに勝る製品はありません。
最強のホームサーバーを手にしたいなら、SynologyもしくはQNAPのNASを選ぶのがおすすめですが、それぞれ得意分野が違うのでハードウェア性能や機能の違いを把握してから購入するのがおすすめです。
そこで今回は、企業だけでなく自宅でも両社の製品を使用している経験を活かし、SynologyとQNAPの製品どちらが優れているのか、ハード性能や機能を徹底比較してみることにしました。
ハードウェア性能比較
SynologyとQNAP両メーカーのNASには、8コアXeonを搭載して全ての機能が使えるハイエンドな企業向けの製品もあれば、低スペックで機能が制限されたエントリーモデルなど、ターゲットや用途に合わせた多数の製品ラインアップがあります。
一眼レフカメラと違い、はじめてのNAS購入だからとエントリ―クラスの製品を購入するとスペック不足で後悔するので、4ドライブベイで企業レベルで使える製品を含めて最高性能の製品を比較してみました。
Buffalo | QNAP | Synology | |
CPU | Intel Atom C3538 | Intel Pentium G5400T | Intel Celeron J3455 |
Average CPU Mark | 2455 | 5048 | 2112 |
コア数 | 4 | 2 | 4 |
最大周波数 | 2.1GHz | 3.1GHz | 2.3GHz |
メモリ | 8G | 8G | 8G |
最大ストレージ | 24TB | 64TB | 64TB |
ネットワーク | 10Gbps | 10Gbps | 1Gbps |
ハードウェア性能だけでNASを評価するならQNAPがおすすめなのは変わりませんが、次点になると考えていたSynologyがBuffaloよりも性能で若干劣るという結果は意外で驚きました。
NASはハードウェア性能だけでなく、堅牢性、機能、操作性などトータルで評価しなければならないので、ハードウェア性能だけで評価するのは誤りですが、スペックは高いに越したことはありません。
次世代ネットワーク対応
10Gbps以上の高速ネットワークの構築はかなりのコストがかかりますが、NASに保存した動画ファイルを直接編集したりコピーを繰り返すなら、高速ネットワークに対応可能なQNAPのハイエンドモデルがおすすめです。
Buffaloの一部製品にも10Gbpsネットワークに対応したモデルがありますが、通信速度が高速でもNAS本体の性能やディスクアクセスが低速だと、通信帯域をフル活用することができません。
動画ファイルを編集する時は、PCのSSDを利用した方が断然処理が速いので、必ずしもNASが高速ネットワークに対応する必要はありませんが、頻繁にファイルをコピーする作業は大きな無駄になります。
NASに溜め込んだファイルをPCにコピーして編集するよりも、共有フォルダにあるファイルを直接編集した方が効率が良い時もあるので、本格的な動画編集作業を自宅でするなら、オプションで10Gbpsに対応できるQNAPがおすすめです。
Buffalo | QNAP | Synology | |
1Gbps | 〇 | 〇 | 〇 |
10Gbps | 〇 | △ | × |
10GbE対応ネットワークカードやスイッチは、まだ企業レベルでも十分に普及していませんが、今後10Gbps通信ポートがPCに搭載されていくのを考えると、NASも高速通信に対応できる製品の方が良さそうです。
家庭で主に使われている100Gbpsと比べると1Gbps通信はかなり高速に思えますが、USB3.1 Gen1よりも大幅に低速な通信速度なのを考えると、動画編集メインの使い方では遅く感じます。
動画の再生や写真を眺める使い方をするなら他のNASでも十分ですが、共有フォルダに保存した動画ファイルを1秒でも速く編集したいのであれば、ハードウェア性能が高く高速通信に対応可能なQNAPがおすすめです。
Synologyにも6ドライブベイ以上の製品であれば10Gbps以上に対応可能なモデルもありますが、今回はホームサーバー向けの製品比較をしているので対象としていません。
因みに、10Gbps対応ネットワークスイッチは最安値で3万円代の物がありますが、この価格帯の製品だと熱暴走でフリーズするので、QNAPのQSW-804-4Cがおすすめです。
QSW-804-4Cは、SFP+と10GBASE-TおよびNBASE-Tが使えるポートを合わせると12ポート使えそうに見えますが、最大で8ポートまでの利用なので、購入の際には十分に注意してください。
ディスク未搭載がおすすめ
NASを買うならBuffaloやI-O DATAなど、コストパフォーマンス重視のディスクが予め搭載されている製品よりも、信頼性が高くデータアクセス速度がより高速なディスクを自分で選んで搭載できる、SynologyやQNAPの製品が断然おすすめです。
家電量販店で売られているNASに搭載されている製品のなかには、PCのローエンドモデルに使われるWestern Digital Greenという、非常にパフォーマンスが悪くNAS用向けのHDDを搭載していないモデルもあります。
BuffaloやI-O DATAでも企業向けモデルなら、Western Digital Redの人気NAS専用HDDが搭載されていますが、大切なデータを消滅の悲劇のリスクを減らしたいのならプロ以上のモデルをおすすめします。
ただし、プロ以上のモデルはディスク本体の価格が高価で、容量次第ではNAS本体よりもコストがかかるので、予算に限りがある方はバックアップを必ず取得する前提でノーマルタイプを選んでください。
こちらの表は、NASに搭載可能なHDDの仕様を簡単にまとめたものですが、Buffaloなどディスクが予め搭載されている製品には、企業クラスのモデルにも絶対に避けたいWD Greenが搭載されている場合があります。
Western Digital GreenはBlueと統合されましたが、低クラスなスタンダードPC向けHDDをNASで搭載するのはリスクが高くパフォーマンスにも影響がでるので、ディスクが搭載されていない製品がおすすめです。
製品シリーズ | 回転速度 | 保証 | MTBF | 想定データアクセス容量 |
WD Blue | 5,400rpm | 2 | – | – |
WD Red | 5,400rpm | 3 | 1,000,000 | 180TB/年 |
WD Red Pro | 7,200rpm | 3 | 1,000,000 | 300TB/年 |
WD Ultrastar DC HC520 | 7,200rpm | 5 | 2,500,000 | – |
Seagate Iron Walf | 7,200rpm | 3 | 1,000,000 | 180TB/年 |
Seagate Iron Walf Pro | 7,200rpm | 5 | 1,200,000 | 300TB/年 |
Exos | 7,200rpm | 5 | 2,500,000 | 550TB/年 |
ホームユーザーにはコスパが優れたノーマルタイプのNAS専用HDDが人気ですが、保証期間、MTBF、想定データアクセス容量をトータルで考えると、ProやエンタープライズモデルのHDDの方がお得な場合もあります。
テレビ番組の録画ならともかくデータの大切さは個人・企業関係なく同じなので、信頼性よりも価格重視のディスクが搭載されたNASを選ぶのだけは絶対に避けてください。
SynologyとQNAPのNASに、ノーマルタイプのNAS専用HDDからエンタープライズ向けのディスクを100本以上搭載してきましたが、容量制限や相性問題に遭遇することなく使えています。
ストレージを管理する操作画面の使い勝手を考えるとSynologyの方が優れていますが、両社の製品は様々なメーカーのディスクをサポートしているので、どれを選んでも問題になることは基本的にありません。
ただし、SynologyとQNAP両社のエントリーモデルにはホットスワップや、後述するSSD Trimに対応していないもののあるので、NASを長く使いたいのであればミドルエンド以上の製品をおすすめします。
SSD対応
ランダムアクセスに強く駆動系の部品を使わないSSDは、HDDよりも遥かに高速アクセスが可能な上にディスク障害の発生率も抑えられるので、ホームサーバであるNASに搭載する方が増えています。
実際に2TBのSSDを2本搭載しRAID-1のストレージとして構成したNASを自宅で利用していますが、スマートフォンで撮影した写真のコピーが物凄く快適で、低速なHDDに戻ることができません。
ランダムアクセスに弱いHDDは、動画の大容量で単一なファイルならコピー速度に不満はありませんが、写真のような小容量データへのアクセスは苦手で、とてもストレスに感じることがあります。
NASにSSDを搭載する時に気を付けなければならないのがTrimコマンドの対応で、HDDを予め搭載している製品だけでなく超エントリーモデルは基本的に対応していません。
両社のNASには、NVMe M.2 SSDや内蔵ドライブのSSDをキャッシュとして利用できる機能もありますが、あまり速度アップにはつながらないので、新たにSSDを購入してまで設定する必要はありません。
2TB以上大容量なストレージをSSDで高速アクセスさせるなら、SSDとHDDを組み合わせてストレージを構成するQNAPのQtier技術を利用した方が、費用対効果が高いと言えます。
ただし、QtierはSSDとHDDを最低でも2本以上搭載可能なモデルでなければなりませんし、2TB以上の容量で集中アクセスの可能性がある中規模以上の企業で必要となる機能です。
そう考えると、NASへ高速なSSDを搭載する予定があるなら、Trimコマンドに対応したSynology DS718+、QNAP TS-251+などのミドルレンジモデル以上の製品を選ぶことを強くおすすめします。
筐体・基盤品質
どのメーカーのNASにも共通して言えることですが、ディスクマウンターにプラスチックが使われていたり、大切なデータを保存するサーバとは思えないシンプルな基盤が使われています。
一見すると、すぐに壊れてしまいそうなイメージがありますが、20台以上のNASを導入してきた過去の実績からして、メイン基板や電源などの電子部品が簡単に壊れることはありません。
仮にNAS本体が壊れたとしても、QNAPやSynologyの製品は他の本体にディスクを移設するだけで復旧できるので、老朽化によるシステム移行も楽に行なうことができます。
SynologyのNASは、ドライベイから3.5インチHDDが上手く取り出せない場合があるので、QNAPの方が丁寧な設計で筐体作りがされていますが、どちらも長く使えるので心配する必要はありません。
ハードウェア総合評価
今回の内容は、評価が著しく低いメーカーの製品を除いてあるため、特に人気が高いQNAPとSynologyのハードウェアを中心に紹介したのですが、機械の性能だけ評価できないのがNASの世界です。
基本的なハードウェア性能や拡張性、Qtierなどの新しいストレージ高速化技術など、ハードウェアを総合的に評価するとQNAPが断然優れていますが、それを覆すだけの機能と使いやすさを備えているのがSynologyのNASです。
QNAP | Synology | その他 | |
ハードウェア基本性能 | 〇 | △ | 〇 |
次世代ネットワーク対応 | 一部非対応 | 非対応 | 〇 |
ディスク選びの自由度 | 〇 | 〇 | ✕ |
SSD対応 | 一部非対応 | 一部非対応 | ✕ |
筐体品質 | 〇 | △ | 〇 |
NASにアクセスする時間が長いのであれば、高価な10Gbpsネットワークを構築できたり、新ストレージ高速化技術のQtierが使えるQNAPの製品が魅力的ですが、家族の写真や動画を再生する使い道がメインなら使いやすいSynologyもおすすめです。
SynologyとQNAPどちらの製品を購入したとしても大きく間違えることはありませんが、スマートフォンとの親和性や操作性の違い、セキュリティ強度に差がありますので、NAS機能の比較内容も含めてお読みください。
筐体のサイズが大きくなりますが個人的におすすめなのは4ドライブベイタイプのNASで、2ドライブベイと価格差がないだけでなく内蔵ドライブにバックアップをすることができます。
Synology DiskStation DS718+ | Synology DiskStation DS918+ | QNAP TS-253Bee-4G | QNAP TS-453Be-4G | |
CPU | Intel Celeron J3455 | Intel Celeron J3455 | Intel Celeron J3455 | Intel Celeron J3455 |
コア数 | 4 | 4 | 4 | 4 |
周波数 | 1.5 GHz (最大バースト2.3 GHz) | 1.5 GHz (最大バースト2.3 GHz) | 1.5 GHz (最大バースト2.3 GHz) | 1.5 GHz (最大バースト2.3 GHz) |
最大メモリ | 6G | 8G | 8G | 8G |
ドライブベイ | 2 | 4 | 2 | 4 |
標準HDD搭載 | - | - | - | - |
SSD Trim | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
•M.2 NVMe SSD | ✕ | 〇 ※キャッシュのみ利用可能 | PCIeアダプターのオプション | PCIeアダプターのオプション |
10 Gigabit Ethernet | ✕ | ✕ | PCIe拡張カードのオプション | PCIe拡張カードのオプション |
参考価格 | 53,129円 | 60,819円 | 54,983円 | 56,358円 |
4ドライブベイタイプのSynology Diskstation DS918+には、NVMe M.2 SSDを2本搭載可能ですが、これはディスクスロットを消費することなくSSDをキャッシュとして利用するための物です。
一般的な使い方をするユーザににおすすめなのは、SSD Trimに対応した4ドライブベイタイプSynology DiskStation DS918+か2ドライブベイのDS718+で、その他のエントリーモデルはテレビ録画以外で買うべきではありません。
少し癖がありますが、とにかくハイスペックなNASが欲しいハイエンドユーザーの方には、4ドライブベイのQNAP TS-453Be-4Gがおすすめで、省スペースにこだわるなら2ドライブベイのTS-253Bee-4Gがおすすめです。
SynologyとQNAP両社の製品は海外製品ということもありサポートはあまり期待できないので、購入するなら初期不良で返品可能なAmazonなどのオンラインストアを利用するのがおすすめです。
スマートフォンや一眼ミラーレスカメラなど、高解像度な写真や動画が簡単に撮影できる時代になり、個人が所有するデジタルデータの量が年々増え続けているため、それらのファイルを管理したり楽しむためにNASを利用する人が増えています。スマート[…]