NASの製品選びはデータ保護の仕組みを理解してから決めるのが重要

NASやサーバー製品を選ぶ時に悩むのが、どのレベルでシステムやデータを守るか、限られた予算のなかで決めなければならない点です。

システムをどこまで強固なものにするかというのは、保険をどこまで手厚くすのかという同じことで、お金をかければかけるほど安心感が増しますが、どこかで線引きをしなければお金が際限なくかかります。

そこで今回は、NASやサーバのデータを保護するために、どの様なディスクの構成にすれば良いのか考えてみました。

ディスクが壊れる確率論などの難しい話は、頭の良い人にお任せするとして、今回の内容はあくまでも長年サーバ製品の管理をしてきた経験則によるものだということを予めお伝えしておきます。

まずはRAIDの基本

システムの可用性を高めるために使われるRAIDにはいくつか種類がありますが、一般的に使われるRAID1, RAID6, RAID10に限定した説明をします。

RAID1

ディスク2本で構成可能なRAIDで、ディスクの容量をあまり必要としない企業や、予算の限られる家庭用のNASとして良く使われる。

昔はディスクの容量が少ないので企業でRAID1を使うケースは多くありませんでしたが、最近のディスクは大容量化が進んでいるので利用シーンが増えている。

お利口なシステムでないと、ディスクが1本壊れた時にシステムのパフォーマンスが劇的に落ちることもある。

QNAPのNASはディスクを交換すれば、システム構築後も容量の拡張が可能なのと、RAID1からRAID5やRAID6への移行が可能です。

ただし、RAIDレベルの移行はかなり時間がかかりますし、移行途中にトラブルが起きた時のダメージを考えると、予め決めたRAID構成で運用を続けた方が無難です。

RAID6

ディスク4本から構成が可能なRAIDで、同時にディスクが2本壊れても稼働する可能性の高いRAIDレベルです。

最近はRAID10の人気に押され気味ですが、構成次第ではRAID6の方が堅牢なので、まだまだ本命とも言えるRAID構成です。

ディスクがクラッシュするとパフォーマンスが落ちることもあるが、100万クラスのサーバでディスクが壊れた時に遅いと感じたことはありません。

RAID10

ディスク4本から構成が可能なRAIDで、HDD8本構成のサーバなら最大4本までクラッシュしてもデータを失うことはありません。

最大というのが曲者で、堅牢と言われるRAID10もペアのディスクが同時に2本壊れると、データは消失するというトラップがあります。

信頼性が高いと言われる人気のRAID10ですが、ディスクの本数次第では堅牢にもなるし脆弱にもなるという、運の要素が強いRAIDとも言えます。

また、ディスクの総本数に対して半分の量しか使えないので、予算に余裕がある企業でないと導入は難しいのかもしれません。

RAIDのパフォーマンス

RAID構成を決める上で、ディスクの読み書き速度も無視できない要素のひとつなので、まずはテスト機を使用したRAID構成によるパフォーマンスの結果を紹介します。

今回RAIDのディスクベンチに使用したのは、ディスクが4本まで搭載できる最強のNAS QNAPのTS-453Aです。

TS-453AはハードウェアのRAIDを搭載していないので、ソフトウェアRAIDを使用しての計測ということを念頭に置いていただけると幸いです。

使用したディスクは、4TB(実質3.64TB)のWDC WD40EFRX-68N32N0 (SATA)で、ネットワークは1GbpsのNICとYamahaの全ポート1GbpsのL2スイッチを使用しています。

計測以外のPCはネットワークに接続していない環境で測定しているので、あまり実践的なデータとは言えませんが、負荷のかからない状態でどの様にパフォーマンスが変化するのかがわかります。

RAIDと言えば可用性が重要視されますが、パフォーマンスもひとつの重要な要素になりますので、RAID構成を決めるひとつの材料にしていただけたらと思います。

まずは、家庭や企業でも良く使われるRAID1の測定結果となります。

次は、企業のサーバーで良く使われるRAID6構成の計測結果となります。

読み込み速度はRAID1と比較しても誤差程度しかありませんが、書き込み時にパリティを分散して書き込むため明らかにパフォーマンスが低下しています。

今回は接続台数が1台なので気になるレベルではないのかもしれませんが、同時接続数が100人規模に増えた時に影響が大きくでるかもしれません。

今回はテストのためにキャッシュの設定を有効にしていませんが、接続人数によってはキャッシュを有効にした方が良さそうです。

今回使用したQNAPのNASは、ファームウェアのアップデートで多くの製品がキャッシュを利用できますが、他社の製品でキャッシュが使えるものは多くありません。

続いては、RAID6よりも可用性が高いと言われている流行りのRAID10の計測結果となります。

RAID10のパフォーマンスはRAID1と同等で、明らかにRAID6よりも高速に書き込みが出来ています。

RAID構成によるパフォーマンスの差を気にするのは、大規模な企業のエンジニアくらいだと思いますが、一応差が出るということを理解した上で、どの様に設定をするか決めてください。

可用性に関しては後程述べますが、RAID10の可用性が高いというのは、NASやサーバのディスクの本数次第だと思います。

流行りだからとRAID構成を決めるのではなく、サーバーやNASの構成や使用目的を考えた上で決めた方が良いでしょう。

リビルド完了までの時間

次は、各RAIDレベル毎のリビルド時間の記録を紹介します。

こちらは、RAID1のディスクを交換してから、リビルドが完了するまでの時間になります。

使用したディスクは他のドライブと同じ4TBのWDC WD40EFRX-68N32N0 (SATA)です。

リビルドが終了するまでの時間は、8時間17分24秒となりますが、何も負荷がかならない状態でのリビルドなので、あくまでも参考程度にしてください。

続いては、RAID6のディスクを交換してから、リビルドが完了するまでの時間になります。

リビルドが終了するまでの時間は13時間3分1秒と、RAID1と比べて4時間45分37秒時間が多くかかりました。

RAIDレベルを決める時は、リビルドが完了するまでの時間も考慮しなければなりません。

最後は、RAID10のディスクを交換してから、リビルドが完了するまでの時間になります。

リビルドが終了するまでの時間は8時間12分13秒とRAID1と同等の時間で、RAID6と比べると4時間50分48秒時間が多くかかることになります。

ファイルサーバーやNASの構成を考える時に悩むのが、リビルドを短く済ませないのであれば容量の少ないディスクを選んだ方がいいのですが、ディスクの本数が多くなると、ディスクが故障する率が高くなるという問題もあります。

ホットスペアは必須

不思議なことに、この1年の間にSASのディスクが立て続けに壊れて、20本近くディスクの交換をしました。

20本全てが壊れた訳でなく10本はディスクが壊れる前に交換したのですが、ホットスペアが機能したので命拾いしたことが何度かあります。

一番最悪なのはディスクが壊れたことに気が付かないことですが、実はホットスペアが壊れることが意外と多くありますので、ホットスペアに頼りすぎるのは良くありません。

別のサーバーが同じタイミングで障害が発生したことがありますが、ひとつのシステムで同時にディスクが壊れたのは今まで一度です。

もちろん、オンラインゲームのサービスや、データーセンターのような、数百台を超えるサーバーの面倒をみている訳ではないので、あまり意味のない話ではありますが、20年近くサーバー製品に携わることができ経験則的な内容です。

最近は、ディスクの大容量化が進んで少ない本数で大容量のファイルサーバーを構築できるようになりましたが、ディスクの容量が大きいとリビルドに時間がかかりすぎて心配になります。

容量の少ないディスクで構成するとリビルドの時間は短時間で済みますが、そもそもディスクが壊れる確率が高くなるというジレンマがあります。

それでも、ホットスペアのないNASを購入し、手動でディスクを交換するよりかはいいので、ディスクの本数を減らしてでもホットスペアは複数本用意した方が良いのではないでしょうか。

ホットスペアも壊れることがあることを考えると、12本ディスクのシステムで最低でも3本くらいあると安心です。

少ないディスクの本数でRAID6を構築する場合、HDDを4本搭載可能な製品を購入するよりも、6本搭載可能な製品を選んでホットスペアを設定した方が安心です。

少ないディスクでRAIDを組むなら

RAIDを構成するのに正解というのはないのかもしれませんが、最小のディスク数でシステムを組むなら、RAID10よりもRAID6の方が安全です。

例えば、RAID6と10の最小ディスク本数である4本でシステムを構築する場合、どちらも最大で同時に2本壊れてもデータは生き残りますが、RAID10はあくまでも最大という条件がついてしまいます。

RAID10は0と1を組み合わせたようなものなので、セットのディスクが2本同時に壊れるとデータの復旧はできなくなります。

その点RAID6は、4本のうちどれか2本が壊れてもデータが生き残るので、少ないディスク構成の場合はRAID6の方が安心です。

もちろん、リビルドの時間などを考える必要はありますが、運悪くペアのディスクがリビルド中に壊れることもあるので、運の要素が強いRAID10を選ぶよりもRAID6の方が安心です。

ただし悩ましいのが、ディスクを24本搭載が可能な大容量のシステムを構築するとなると、最大で12本ものディスクが壊れても生き残れるのがRAID10なので、大規模なシステムの場合は運の要素も無視はできません。

ただし、今回はNASの話題を中心にしているので、コストパフォーマンスの悪いRAID10よりも、RAID1に外付けHDDにバックアップを取るか、RAID6に外付けHDDへバックアップするのが良いのではないでしょうか。

システムの規模に応じでどのRAIDレベルにするのか考える必要がありますが、企業で使うNASなら6個のディスクが搭載できるQNAPの製品がおすすめです。

6ドライブ搭載のモデルはいくつかありますが、値段が大差ないことを考えると、スペック的に優れたこちらの製品がおすすめです。



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